旭化成がポルトガルで新たな電解プロセスを商業運転
旭化成株式会社とCAC Engineering GmbHは、ポルトガルのBondalti Chemicals, S.A.と協力し、イオン交換膜法食塩電解プロセスの商業運転を始めました。このプロセスは、環境への負担を軽減するための新しい技術として、広く注目されています。世界中の約30カ国、160以上の工場で利用されているこのプロセスは、特にクロールアルカリ産業において重要な役割を果たしています。
パートナーシップの意義
旭化成が持つ豊富な経験と技術、CACの高度なエンジニアリング手法、Bondaltiの運用技術を結集することで、電力消費の削減や資源の無駄を減らすことを狙います。特に、BondaltiのEstarreja工場に導入される9槽の電解槽のうち1槽は「実証実験槽」として機能し、通常運転と並行して測定・試験を行います。
環境負荷の低減を目指す
この取り組みはポルトガル政府の「Recovery and Resilience Plan」にも支えられており、Bondaltiが掲げる脱炭素に向けた目標の実現を手助けします。現在、EUでは「CBAM(国境炭素税)」や「CSRD(企業サステナビリティ報告指令)」が導入され、環境への影響に敏感な産業環境が形成されています。
旭化成は、長年の事業経験を生かし、さらなる省電力化を推進するため、2020年に買収したRecherche 2000 Inc.の技術、運転監視システム、そして新形状電極の開発技術を活用し、BondaltiやCACと連携して新しい運転方法を模索します。
エコシステムの構築
また、旭化成は金属リサイクルのエコシステムを構築する取り組みの一環として、実証試験で使用した電解セルと電極のリサイクルも計画しています。このような持続可能な技術の開発は、クロールアルカリ業界全体に大きな影響を与えるでしょう。
ステークホルダーの意見
BondaltiのDavid Lopes氏は、パートナーシップに感謝し、新しい工場の開設が持続可能なイノベーションへの道を開くと述べています。また、旭化成の角佳典部長は、本プロセスの商業運転を開始できたことに満足し、次世代の技術開発における協業の力を強調しました。
CACのJörg Engelmann CEOも、長年にわたる協力が成功に繋がったとし、今回の新たなプロジェクトが技術革新をもたらすことを期待しています。
Bondaltiについて
Bondaltiはポルトガルの最大手化学企業であり、持続可能な化学を通じてより良い世界の実現を目指しています。2025年には不正規RID基準に基づく持続可能性ランキングで1%以内に位置付けられており、業界のリーダーとしての評価を受けています。
最後に
今回の取り組みは、私たちが直面する環境問題に対する重要な一歩であり、持続可能な化学産業を目指す大きな試金石となることでしょう。今後の動向に期待が寄せられます。