次世代のエネルギーを支えるTORMED®とペロブスカイト太陽電池の新たな可能性
共同研究の背景と目的
近年、太陽エネルギーの利用が重要視されており、その中でもペロブスカイト太陽電池は次世代の太陽光発電システムとして注目を集めています。経済産業省が2024年度に向けて発表した予算案には、この新しいタイプの太陽電池や全固体電池に関する設備投資支援策が盛り込まれており、国としての積極的な取り組みが伺えます。
ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟性があり、特に設置ポイントの自由度が高いことから、カーボンニュートラルに向けた重要な技術とされています。しかし、実際の製造過程では使用するフィルム素材が大きな課題となっていました。従来のポリエチレンテレフタレート(PET)は安価で入手しやすいものの、高温での処理能力が欠如し、長期使用に伴う劣化も懸念されるのです。
この課題を解決するために、TORMED®(トーメッド)という機能性透明ポリイミドフィルムが登場しました。この新素材は、高耐久性と耐熱性を両立させており、ペロブスカイト太陽電池の性能を向上させることが期待されています。
TORMED®の特性
TORMED®は、300℃を超えるガラス転移温度を持ち、高屈曲性及び耐化学薬品性にも優れています。これにより、電子輸送層という重要な部分を高温で効率よく処理することが可能になり、電池全体の変換効率を向上させる結果が得られました。
特に、制作プロセスでの高温処理を可能にすることで、デバイスのパフォーマンスを驚くほど高めることができました。これにより、TORMED®はペロブスカイト太陽電池にとって極めて有用な材料として位置づけられることとなったのです。
学会での発表と反響
2024年9月16日から20日まで開催される第85回応用物理学会秋季学術講演会において、宮坂研究室はこの成果を発表します。特に9月18日のポスターセッションでは、多くの参加者が集まり、TORMED®に関する質問や意見交換が盛んに行われました。参加者の関心が高く、ペロブスカイト太陽電池の将来性についての議論が活発に交わされたことが印象的でした。
TORMED®の広がる可能性
TORMED®は、従来の用途である透明フレキシブルプリント基板(FPC)にとどまらず、スマートグラスやタッチパネル、さらには次世代ディスプレイ技術(MiniLED、MicroLED)への応用にも期待されています。透明性に富みながらも、その高機能性を保持できるTORMED®は、今後のものづくりに欠かせない素材となるでしょう。
株式会社アイ.エス.テイについて
このTORMED®の開発を手がけた株式会社アイ.エス.テイは、高付加価値な素材を追求し続ける企業です。1983年に設立された同社は、ポリイミド樹脂を基軸とした機能性材料の開発を行い、様々な業界に対して素材を提供してきました。特に、高耐熱素材の代表として多くのニーズに応えており、国内外での市場でも高いシェアを誇っています。技術力をもって未来を創造するという使命のもと、さまざまな分野への展開を進めています。
まとめ
次世代のエネルギーシステムを支えるための鍵として、機能性透明ポリイミドフィルムTORMED®とペロブスカイト太陽電池の組み合わせが注目されています。この技術がもたらす持続可能な未来に対する貢献を期待しつつ、研究開発がさらに深化していくことを望みます。