トドの新たな認知能力が話題に
トドの「ハマ」は、日本にある城崎マリンワールドで、驚くべき新たな認知能力を示しました。麻布大学と共同で行われた研究により、ハマが人間の動作を模倣できることが世界で初めて証明されました。この発表は、2025年に北欧の出版社が発行する専門誌『Animal Cognition』に掲載され、動物の認知の理解に革命をもたらすものとなっています。
研究の背景
本研究は、麻布大学獣医学部の今野晃嗣教授との共同作業として2023年10月にスタートしました。2024年には日本動物心理学会で研究成果の一部を発表し、躍進的な成果が期待されています。本論文は、査読過程でのリジェクトを経て、三度目の投稿でついに掲載が決まりました。
研究概要
研究の中心となったのは、「Do as I do(私のマネをして)」という模倣トレーニングです。ハマがまず覚えたのは、トレーナーが行う三つの基本動作です:
1. トレーナーが立ち上がる → ハマも立ち上がる
2. トレーナーが舌を出す → ハマも舌を出す
3. トレーナーが首を振る → ハマも首を振る
トレーニングの初期段階では、ジェスチャーなどのヒントを導入し、最終的にはヒントなしでも動作を覚えられるようになりました。この過程で、「トレーナーの動作をマネする」というルールを理解することが狙いでした。
模倣の実験と検証
実際に模倣が成立しているかを確認するために、新たに動作を用いてハマがどのように反応するかをテストしました。模倣トレーニングで教えていない動作にもかかわらず、ハマはトレーナーの動きを即座に再現することができ、これは限られたトレーニングから「真似する」ルールを学んでいることを示す結果となりました。
さらに、これまで教えたことがない新しい動作についても、ハマが模倣できることが確認されました。トレーナーの動作が終了した後に、その動作を思い出して模倣する能力も見られ、このことは「真の模倣(true imitation)」に近い現象とされています。
実験の工夫と課題
本実験では、模倣成果が他の情報によるものとされないように、厳格な条件設定が施されました。トレーナーとハマの間にパーテーションを設置し、視覚情報を遮断するルールを導入しました。これにより、ハマは周囲の影響を受けずに模倣行動を行うことが求められました。
研究成果の意義
この研究は、人間特有とされていた模倣能力を動物にも確認する重要な結果です。トドのハマは、異種動物である人間の動作を模倣する能力を持っており、それには高度な認知力が必要とされます。また、模倣行動の再現には、見た動作を記憶し、イメージを保持する能力が関与していることも明らかとなりました。
城崎マリンワールドについて
城崎マリンワールドは、兵庫県豊岡市に位置し、体験型水族館として、多様な展示やショーを提供しています。毎年新しいイルカやアシカのショーが行われ、訪れる人々にとって癒しと楽しみを与えてくれる場です。
この研究成果は、今後の動物行動学において重要な示唆を与えるものであり、さらなる研究の推進が期待されます。