タイヤの耐久性を支える新しい知見
住友ゴム工業株式会社(社長:山本悟)は、ドイツ・ドレスデン工科大学のGert Heinrich教授との共同研究を通じて、タイヤの耐久性能を左右するゴムの破壊メカニズムを新たに解明しました。この研究成果は、2025年3月6日から7日にかけて米国フロリダ州オーランドで開催された米国化学会のイベントにおいて発表され、業界内外から大きな注目を浴びています。
研究の背景とき裂現象
タイヤの耐久性は、安全性において非常に重要な要素です。この耐久性能は、ゴムの「き裂現象」に大きく依存しています。これまで、ゴム材料の耐久性は主に引き裂き試験で測定されてきましたが、具体的なき裂先端での構造変化やメカニズムについては不明瞭な部分が多く残っていました。
住友ゴムの研究チームは、シミュレーション技術を駆使して、ゴムのき裂先端に作用する力を解析しました。その結果、き裂が進行するとき、裂け目周辺では膨張変形が生じ、微小な空洞(ボイド)が形成されることがわかりました。これにより、き裂先端のストレスが減少する一方、ボイドが成長し合一することで、き裂進行が加速することも明らかとなりました。この新知見が今後のタイヤ開発に与える影響は大きいと考えられています。
今後の研究課題
住友ゴムでは、ボイドの分散状態が力の分布に与える影響やき裂特性についての研究をさらに進めることを計画しています。これにより、摩耗に強く、環境への負担が少ないタイヤの開発を目指しています。
Gert Heinrich教授の受賞
Gert Heinrich教授は、ポリマー材料とエストラマー技術の分野で国際的に認められた権威であり、今回の発表は、彼が米国科学会から授与された「Goodyearメダル」を記念した特別セッションで行われました。このメダルは、ゴム産業における革新と発展に数多くの貢献をした個人に与えられるものです。その功績は研究発表の中で高く評価され、新たな発見がもたらす可能性に期待が寄せられています。
サステナビリティに向けた戦略
住友ゴムは2023年3月に、タイヤ事業における「TOWANOWA」というサーキュラーエコノミー構想を発表しました。この構想は、バリューチェーンの5つのプロセスで構成され、データを共有・活用することで新たな価値提供を目指すものです。この取り組みにおいて、今回の研究成果が重要な役割を果たすことが期待されています。
「TOWANOWA」の「材料開発・調達」プロセスにおいて、得られたデータを元に、より高機能で質の高いタイヤの開発を進めていく方針です。住友ゴムは、このような革新を通じてESG経営を促進し、2050年までにカーボンニュートラルを目指す持続可能な社会の実現に貢献する意向を示しています。
結論
住友ゴムの今回の研究は、タイヤの耐久性能向上に向けた非常に重要なステップです。今後の進展が期待される中、タイヤ業界における新たな技術革新が進むことを願っています。これにより、より安全で環境に優しいタイヤが市場に登場することになるでしょう。