AI技術で進化する河川水位予測
近年、異常気象による降雨量の増加が問題視されている中、株式会社ベクターデザイン(東京都渋谷区)がNumberホールディングス(富山県高岡市)と共に開発した新たなAIを活用した河川水位予測モデルが、94%という高い精度で水位の急増を予測することに成功しました。
水害リスクの重要性
日本国内では、多くの気象災害が発生しており、特に都市部の河川や用水路など小規模な河川においても水害の危険性は増しています。これに伴い、河川の氾濫や冠水がもたらす人的・物的被害の軽減が急務となっています。水防活動の強化が求められるなか、技術の革新が期待されています。
AIモデルの仕組み
この河川水位予測モデルでは、Microsoft Research(MSR)が開発した機械学習アルゴリズム「LightGBM(LGBM)」を用いています。このアルゴリズムが過去の観測データをもとに、各観測地点における水位の変動を的確に予測できるシステムを構築しました。特に、東京都内の河川において20分から30分後の水位急増を89%の精度で予測する成果を上げました。
今後の展望
将来的には、国土交通省が提供するXRAINや気象庁のナウキャストなどの最新のデータを活用し、1時間以上前からの水位予測計算の実現を目指しています。これによりもっと広範囲にわたる地域の水位予測が可能となり、地域自治体の水防対策に革命をもたらすことが期待されています。
2期実験の計画
次のステップとして、2025年9月より2期実験を開始する計画です。この実験では以下の4つのテーマを検証します。
1. 都内の複数の河川におけるモデルの適用と検証による予想精度の向上。
2. 深層学習モデルを活用し、さらなる予測精度の向上を目指します。
3. 国土交通省XRAINから得られる250mメッシュのデータを利用して、水位変動に関係が深い地点の特定を行います。
4. 河川の流速を監視カメラの映像から計測するシステム(STIV)の検証も行う予定です。
2026年春のリリース予定
このモデルの実用化が進むことで、2026年春には株式会社ベクターデザインの提供するクラウド防災システム『Qumowill PRO』の一機能として、水防組織向けに提供される見込みです。より迅速かつ正確な水位情報を活用することで、地域の安全を守る重要なツールとなるでしょう。
今後は、250mメッシュ対応やコストパフォーマンスに優れたシステムのリリースも予定されています。これによって、より多くの自治体や関係機関がこの技術を活用し、地域の水害対策を強化することが期待されます。