企業価値担保権の新しい可能性
近年、不動産担保や経営者保証を超えた資金調達手段「企業価値担保権」が注目を集めています。この制度は、将来のキャッシュフローや無形資産を担保に資金を調達できるため、とりわけ有形資産が乏しいスタートアップや経営者保証に依存する企業にとっては、非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
2024年6月には「事業性融資の推進等に関する法律」が成立予定で、施行が待たれていますが、現状、企業価値担保権の認知度は約3割にとどまっています。特に「知らない」という状態の企業が56.5%にのぼることから、この新しい制度についての理解が不足していることが浮き彫りになりました。
認知度調査から見る実態
帝国データバンクの調査によると、企業価値担保権を知っている企業は少なく、実際に制度の内容を理解している企業はわずか0.5%、名前を聞いたことがあるが詳細は知らないという企業も22.4%と、全体の認知度は低いままです。しかし、知らないと答える企業の中には、「新しい言葉なので、これから調べていきたい」という前向きな声もあり、この制度に対する期待感も伺えます。
企業規模別に見ると、大企業に比べて中小企業や少人数の企業での認知度はさらに低く、特に「5人以下」の企業では61.1%が知らないと答えました。小規模な企業からは、制度の理解を深めたいという意見もあり、情報の普及が求められています。
企業の活用意向
企業価値担保権の活用意向については、調査対象企業のうち26.7%が「活用したい」と評価していますが、それと同様の割合で「活用したいと思わない」とも答えています。活用したい理由としては、66.2%が「自社の事業性に着目した評価に基づき融資を受けたい」と述べており、自らのビジネスモデルに合った評価方法が求められていることが明らかです。
一方、「活用したいと思わない」という企業の理由には、自己資本で資金をまかなえていることや、現状の融資手法で問題がないとする意見が多く、今後の文脈でどのような影響を及ぼすかが注目です。
経営改善に向けた期待
特に、企業価値担保権の導入により、金融機関がタイムリーで適切な支援を提供できる期待も高まります。この制度が実現すれば、企業の資金繰りや経営状況を改善する新たな手段となり、事業承継や積極的な事業展開が後押しされる可能性があります。
企業価値に基づく評価という新しい視点が、より効率的な資金調達方法として確立されることで、中小企業を活性化し、経済全体への寄与が期待されます。今後は、金融機関も適切な判断ができるよう、制度の詳細や評価方法をしっかりと伝えることが重要です。
まとめ
結局、企業価値担保権は未だ認知度が低く、多くの企業がその内容や利点について理解を深める必要があります。しかし、前向きな意見や活用の可能性を感じる企業が存在するのも事実です。今後、多くの企業がこの制度を理解し、利用することで、新しい資金調達の風潮が生まれることに期待が寄せられています。