京大病院とテンクーの新たながんゲノム医療支援システム
京都大学医学部附属病院(京大病院)と株式会社テンクーが、2025年4月からがんゲノム医療を支援するための新しいシステム「RAD(Rule based Annotation Descriptor)」を運用開始します。この画期的なシステムは、京大病院の武藤学教授らが開発したエキスパートパネルの解釈に関する方針である「京大ルールブック」をもとに構築されました。
がんゲノム医療の現状
がんゲノム医療は、患者それぞれのがんの特徴をゲノムレベルで解析し、最適な診断や治療を行う手法として国際的に注目されています。日本では2019年6月から「がんゲノムプロファイリング検査」が保険適用となり、これまでに10万人以上がこの検査を受けています。ここで重要な役割を果たすのが「エキスパートパネル」で、専門医が集まって遺伝子の解析結果や治療方針について議論しますが、その負担は大きいとの指摘があります。実際、がんゲノム医療中核拠点病院などからは、遺伝子バリアントの解釈に対する専門的な知識を必要とすることが課題として挙げられています。
新システムの特徴
京大病院では、従来の解釈プロセスを改善するために「京大ルールブック」を整備し、さらにテンクーと共同でこのルールブックを自動的に参照しながら運用できる仕組みを整えました。具体的には、エキスパートパネルの負担が軽減できるように、情報の管理や解釈がより効率的に行えるように工夫されています。すでにテスト運用を行い、安定した状態での運用が可能であることが確認されました。これにより、臨床現場での実際のサポートが見込まれています。
医療現場への影響
武藤教授は「このシステムを活用することで、がんゲノム医療連携病院が遺伝子の解釈を自院で進める支援となる」とし、「専門的な医療が全国に広がることが期待される」とコメントしています。また、今後は最新の遺伝子解釈情報やシステムのアップデートを継続し、より多くの医療従事者や患者に価値を提供していくことが求められています。京大病院とテンクーの連携により、がんゲノム医療のさらなる進化が期待されるでしょう。
テンクーの背景
テンクーは東京大学発のベンチャー企業で、がんゲノム医療に特化したデータ解析やバイオインフォマティクスに取り組んでいます。彼らが開発した「Chrovis」というトータルソリューションは、多数の賞を受賞し、厚生労働省のプログラム医療機器にも指定されています。これにより、がんゲノムレポーティングの分野でも高い技術力が評価されています。
結論
今回の京大病院とテンクーの共同研究によって、がんゲノム医療の進化は確実に促進されます。患者に寄り添った医療を実現するための新しいシステムの運用は、今後のがん治療における重要なステップとなることでしょう。がんゲノム医療が広まることで、より多くの患者が最適な治療を受けられる未来が期待されます。