IoTデバイスによる地域への新たな視点
近年、日本全国の地方都市は、人口減少や高齢化に直面し、その経済活動や賑わいが縮小しています。このような状況を打開すべく、各地で中心市街地の活性化を目指すさまざまな施策が実施されていますが、施策の効果を定量的に評価するための手法は新たに求められています。
その期待に応えたのが、琉球大学の上地安諄准教授とその研究チームによる研究です。彼らは、観測データを基にした新たな評価指標を構築し、具体的なエビデンスを提示することで、地域活性化施策の効果を明らかにすることを目指しました。
研究の背景と目的
研究の発表された論文『Evaluation of Revitalization Measures for Central City Areas Considering Changes in Human Flows』では、以下の評価指標が設定されています。
1.
地点別訪問率
2.
観測地点数
3.
滞在時間
4.
通過時間
これらの指標をもとに、沖縄県那覇市を対象にした活性化施策の効果を測定しました。特に注目したのは、Wi-Fiパケットセンサーから得られたデータであり、この技術を利用することで人流計測が行われ、定量的な評価が可能になりました。
主な結果と示唆
調査の結果、コロナウイルスが流行する前の2017年と比較して、2020年には多くの地点で訪問率が減少していることが明らかになりました。しかしながら、市街地の中心地においては、逆に訪問率が上昇したポイントや、観測地点の増加、滞在時間の向上が見受けられました。特に、施策が実施されたエリアにおいては、通過時間の増加も確認され、その結果として同市の施策は一定の効果を有することが確認されました。
この研究は単なる数字の羅列に留まるものではなく、地域の活性化施策が具体的に何をもたらしたのかを示す新たな指針を提供しています。上地准教授は、今後も様々な交通関連のデータを活用し、さらなる研究を進める考えを示しています。
IoTデバイスの可能性
IoTデバイスは、これまで以上に地域の活性化に寄与する存在となる可能性を秘めています。デジタル技術を駆使することで、以前は難しかったリアルタイムのデータ収集や分析が実現し、地域の課題解決に向けた新たなアプローチが可能になるのです。
本研究の発表は、「Journal of Digital Life」において公開されています(
Journal of Digital Life)。新たな知見は、今後の地域経済の再生に向けた議論を活性化することが期待されています。
社会の各側面に変革をもたらす可能性を秘めたIoT技術。これからの地域活性化策をどう進化させていくのか、注目が集まります。