児童養護施設出身者が心のケア義務化を求める署名を提出
2021年7月19日、厚生労働省において、虐待から逃れた子どもたちへの心のケアの義務化と拡充を求める47,403人分の署名が提出されました。この署名活動は、社会的養護の経験を持つ山本昌子さんが発起人となり「施設・里親家庭で暮らす子ども・暮らしていた若者への心のケアの拡充を求めるプロジェクト」として展開されました。
署名活動の経緯
署名集めは2020年7月からスタートし、約1年にわたりオンラインや紙媒体を通じて行われました。この活動に参加した多くの人々が、子どもたちへの心理的サポートを求める声を上げました。
この署名には以下の二つの要求が含まれています。
1. 児童養護施設内、または里親家庭で育つ子どもが虐待の後遺症に対する治療を受けられる環境を整備すること。
2. 施設や里親家庭を出た後も、必要に応じて心理的ケアや治療を無償で受けられる機会を提供すること。
署名の詳細は
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アンケート調査の結果
署名活動と並行して、社会的養護の経験を持つ116名に対してアンケート調査も行われました。その結果、保護を受けている期間中に精神的ケアを受けた割合はわずか37%であり、多くの子どもたちが虐待を受けたにもかかわらず、心理的サポートが不十分であることが浮き彫りになりました。
詳細なアンケート結果は、
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提言書の内容
アンケート調査を基に、精神医療の専門家や児童養護施設職員、アフターケア団体の職員との意見交換を重ね、提言書がまとめられました。提言書には次のような重要なポイントが示されています。
1. 養育職員や里親に対するメンタルケアおよびトラウマインフォームドケアの研修を必須にすること。
2. 養育職員及び里親の心理的安全を確保するための環境を整備すること。
3. 社会的養護を経験した人が必要な時に相談できる体制を整えること。
提言書の詳細は、
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厚生労働省との意見交換
署名活動の過程で、複数回にわたり厚生労働省との意見交換を行った結果、2021年度の予算要求に「社会的養護経験者のメンタルケア制度」が初めて盛り込まれることとなりました。これにより、今後のメンタルケアの施策に向けた重要な一歩が踏み出されることが期待されています。
プロジェクトの背景と目的
このプロジェクトには、発起人の山本昌子さんをはじめ、さまざまな団体のメンバーが参加しています。この活動の背景には、虐待を受けた子どもたちが心理的な苦痛を抱え続けている現実があります。山本さんは、「虐待は保護されることで終わるものではない」と訴え、多くの子どもたちが抱える後遺症の重要性を強調しています。
最後に
今回の署名活動を通じて、多くの人々の関心が集まり、子どもたちへの心のケアの必要性が広まっています。私たち一人ひとりがこの問題に目を向け、支援が必要な子どもたちを助けるためのアクションを起こすことが求められています。