廃棄ホタテ貝殻が地球を救う!?環境配慮型テトラポッド「HOTATETRAPOD」誕生
世界的な砂不足問題の深刻化が叫ばれる中、その解決策として注目されているのが、廃棄ホタテ貝殻を砂の代替素材として活用したテトラポッド「HOTATETRAPOD」です。株式会社TBWA HAKUHODO、北海道猿払村、猿払村漁業協同組合、株式会社ササキ、清水建設株式会社、甲子化学工業株式会社、株式会社不動テトラ、日本国土開発株式会社が共同で開発したこの画期的なテトラポッドは、2024年7月20日から猿払村で開催される「第50回さるふつ観光まつり」で初お披露目されます。
「HOTATETRAPOD」誕生の背景
「サンド・クライシス」と呼ばれる砂不足問題は、地球規模で深刻化しており、コンクリートの製造や住宅、道路、インフラ整備など、私たちの生活に欠かせない様々な場面で砂の不足が懸念されています。砂の採取は、海岸の侵食や塩害、高潮対策の喪失を引き起こす可能性があり、生物や環境への影響も懸念されています。
一方、国内の水産物の中でも輸出額が最も多いホタテは、猿払村など、日本各地で生産されています。しかし、ホタテを加工する際に発生する廃棄貝殻は、年間約4万トンにも及び、その有効活用が課題となっていました。
こうした背景から、HOTATETRAPOD開発チームは、廃棄ホタテ貝殻を砂の代替素材として活用することで、砂不足問題と廃棄物問題の両方の解決を目指しました。
「HOTATETRAPOD」の3つの特徴
1.
砂の使用量を約50%削減
HOTATETRAPODは、従来のテトラポッドに使用される砂の代わりに、猿払村の廃棄ホタテ貝殻を粉砕した「シェルサンド」を使用することで、砂の使用量を約50%削減することに成功しました。この取り組みが普及することで、年間431トンの砂の使用削減が見込まれています。
2.
ブルーカーボンを増やす海藻類が着生しやすい構造
HOTATETRAPODは、ホタテ貝殻から着想を得たリブ構造を採用することで、表面積を拡大し、海藻類が着生しやすい構造となっています。海藻類は、海中の炭素を吸収するブルーカーボンの役割を果たしており、HOTATETRAPODは、環境負荷の低減に貢献します。
3.
初期強度が向上
廃棄ホタテ貝殻を素材として使用することで、コンクリートの初期強度が向上します。これは、貝殻の微粉末効果による初期水和の促進と、炭酸カルシウムと各種カルシウムアルミネートとの反応による効果によるものです。
3Dプリンターで制作された台座も注目
HOTATETRAPODを展示する台座は、清水建設が開発した3Dプリント材料「ラクツム(R)」の砂代替材料として、廃棄貝殻を100kg/m3使用したモルタルで制作されました。3Dプリンターを使用することで、廃棄貝殻を自由な形状の部材に再生することが可能となり、環境に優しく、従来のコンクリートでは表現できない独特のテクスチャの台座を実現しました。
社会貢献と持続可能な未来への取り組み
HOTATETRAPODは、砂不足問題の解決だけでなく、廃棄物問題の解決にも貢献する画期的な取り組みです。開発チームは、このプロジェクトを通じて、地域社会の活性化、環境負荷の低減、そして持続可能な未来の実現を目指しています。
今後の展開
HOTATETRAPODは、2024年7月20日から猿払村で開催される「第50回さるふつ観光まつり」で初お披露目された後、猿払村に記念碑として設置される予定です。その後は、北海道オホーツク地方の海岸に設置するための体制作りが進められます。
開発チームは、HOTATETRAPODの普及を通じて、砂不足問題の解決と環境保護に貢献し、持続可能な社会の実現を目指していきます。