鉛の超伝導特性における層別欠陥の影響
千葉大学大学院工学研究院の山田豊和准教授を中心とした国際共同研究チームは、鉛(Pb)の超伝導状態が「積層欠陥」によってどのように影響を受けるかを探る画期的な研究を行いました。この研究は、超伝導物質の理解を深めるだけでなく、リニアモーターカーや量子コンピュータのような最先端技術の発展に寄与することが期待されています。研究成果は、2026年2月にアメリカ物理学会の『Physical Review Letters』に掲載されました。
研究の背景と意義
超伝導は、特定の金属を極低温に冷却することで電気抵抗がゼロになる現象です。過去の研究では、超伝導体の複雑なバンド構造が原因で、個々の電子の振る舞いを詳細に観察することが難しいとされていました。しかし、今回の研究では、鉛を43 mK(約マイナス273.11℃)まで冷却し、走査トンネル顕微鏡(STM)を使ってその電子状態を詳細にマッピングしました。その結果、鉛の二つの超電導バンドとともに「積層欠陥四面体(SFT)」という特異な構造が観察されました。
研究成果の具体的な内容
観察結果には、STMで得られた鉛表面の形状像や電子状態密度が含まれており、鉛の表面での原子レベルの欠陥や、アルゴンイオンスパッタリングによって生じるアルゴンバブルなどが確認されました。特に、鉛の表面で見られた不純物や構造の変化は、鉛の超伝導特性にどのように寄与するのかが明らかとなり、新たな理解をもたらす可能性があります。
例えば、鉛の結晶構造における層別欠陥が、超電導バンドの間の相互作用を変える可能性を示唆しており、これは異なる超伝導特性をもたらす要因となるかもしれません。
今後の展望
この研究により、鉛の超伝導バンド間の相互作用が、原子積み重ねのずれによって変化することが分かりました。今後の研究では、積層欠陥を制御することが、超伝導特性の向上にどのように役立つかを明らかにすることが期待されています。リニアモーターカーや量子コンピュータなど、幅広い応用が可能性を秘めているため、今後の発展から目が離せません。
用語解説
スタートレック的な走査トンネル顕微鏡(STM)とは、原子の世界を可視化する強力な装置で、探針が試料表面をなぞることで、原子分解能で表面を観察することができます。また、アルゴンイオンスパッタリングは、表面の改質や清浄化を行う際に用いる技術で、原子を物理的に叩き出すことによって進行します。
この研究成果は、基礎研究としての意義のみならず、超伝導技術の実用化を見据えた重要な一歩と言えるでしょう。