微生物探索の未来を切り拓く新技術開発の成果
国立研究開発法人産業技術総合研究所、通称「産総研」は、このたびバイオものづくりの基盤となる微生物の増殖検出技術を開発しました。在来の方法では時間を要し、効率的なスクリーニングが難しい微生物の探索を、革新的なアプローチにより加速度的に進めることができるのです。この新技術は、特にドロップレット内部における微生物の増殖状況を高感度で検出するという機能を持っています。
開発の背景と技術の特長
バイオものづくりを支えるためには、さまざまな微生物資源の充実が欠かせません。しかし、これまでの探索方法は環境試料から新規微生物を見つけ出す際、手作業で一つ一つ単離するしかありませんでした。今回は、そのボトルネックを打破するために、ドロップレット技術を応用した「ミリオンスクリーニング」という方法に注目。これにより、数百万の微生物サンプルを迅速に評価し、必要なものだけを選別することが可能になりました。
特に注目すべきは、開発された蛍光染色法です。この技術では、微生物の膜成分に対して蛍光色素を使用し、増殖に伴って蛍光の強度を高めます。これにより、微生物の存在を的確に把握できます。この手法は、従来の方法に比べてはるかに高い感度で微生物の存在や数量を示すことが可能で、特定の条件下で培養されたドロップレットから選抜した微生物を効率的に回収できます。
研究の進展と実用化
ノートとしても重要なのは、株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズがこの技術に基づいた検出試薬を製品化し、10月1日から販売を開始したことです。これにより、研究機関や企業において、この革新的な技術が広く利用されることを期待しています。
今回の開発が進められた背景には、国が推進する「バイオものづくりプロジェクト」があります。環境問題の解決や持続可能な社会を実現するためには、バイオエコノミー社会の構築が求められる中、微生物が持つ多様な可能性に注目が集まっています。
社会的意義
この新技術は、微生物のミリオンスクリーニングを実現することで、さまざまな環境中から有用微生物を短期間で効率よく発見できます。特に、微生物の育種や新しい機能を持つ微生物の選抜において、その効果を大いに発揮するでしょう。企業においても、バイオものづくりを目指す際に欠かせないツールとなることが予想されます。
未来に向けて、産総研はこの技術をさらに改良し、さまざまな応用範囲を広げていくことを目指しています。多様な微生物を利用した新たな製品開発や、既存の課題の解決に向けての取り組みが期待される中、この画期的な技術の進展が、さらなるイノベーションを引き起こすことを願っています。