大規模マテリアルデータ基盤の共用開始で産業と科学を新たなステージへ
大規模マテリアルデータ基盤の構築がもたらす未来
文部科学省は、「マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)」というプロジェクトを通じて、国内の26の大学や研究機関が連携し、先端設備の全国的な共用体制を築くことに成功しました。この取り組みにより、利用可能なマテリアルデータが約11万件に達し、2025年9月30日から正式に共用が開始されることとなります。これにより、データを駆使した研究開発の加速化が期待されています。
1. 背景と意図
近年、材料研究の分野では、従来の試行錯誤に依存した研究方法から、AIを活用した「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」へとシフトしています。アメリカなどの国では、この流れが国家戦略として位置づけられ、我が国も2021年に策定した「マテリアル革新力強化戦略」において、データとAI技術の融合を進めています。これにより、研究開発の迅速化や品質向上を目指しています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の急速な進展を受け、戦略は2025年へと改定され、さらに強化された施策が打ち出されています。この計画に基づき、マテリアルDX推進のために新たなプラットフォームを整備し、先端設備の共用体制が構築されたのです。
2. データの共用とその意義
ARIMにおけるデータ共用サービスは、研究者や業界にとって非常に重要な意味を持っています。約1,200台の機器を利用した研究から得られた多様なマテリアルデータは、化学的特性や測定結果などを含み、AIの活用が可能な形式で提供されます。これにより、データが機関の枠を超えて広く利用されることが期待され、競争力向上につながるでしょう。
共用データの活用例としては、実験条件の設定支援や他のデータとの統合利用が挙げられます。さらには、教育コンテンツとしても活用が見込まれ、若手研究者の育成にも寄与することが期待されています。
3. 利用方法とアクセス
データ利用には、専用サイト「データ共用ポータル」での申請が必要です。シングルライセンスまたはグループライセンスが提供されており、年会費制となっています。利用者は、特定の条件を満たす必要があり、詳細は今後ARIM Japanのウェブサイトにも掲載される予定です。
4. 今後の展望
この共用基盤が引き起こす変革は、単にデータを提供するだけでなく、科学の発展を大いに加速させる可能性を秘めています。データの蓄積はもちろん、将来的には新たな発見や革新を促す源泉となるでしょう。特に、デジタル技術の進化により、従来の研究スタイルが変わりつつあることを考えると、この取り組みは国際競争における我が国の優位性を高める大きな一歩となるでしょう。
今後もARIMが推進するデータ駆動型マテリアル研究開発にご期待ください。