神経科学の革新を支えるRbfox3-iCreマウスの魅力
近年の神経科学研究は、特定の遺伝子を操作することで脳と体のメカニズムを理解することが進化しています。この度、岐阜大学の研究者たちが開発した新しいマウスモデル、Rbfox3-iCreマウスは、その優れた能力で特に注目されています。
Rbfox3-iCreマウスとは?
このマウスモデルは、成熟神経のマーカーとして知られるRbfox3遺伝子に、改良型DNA組換え酵素Creを組み込むことで、特定の細胞型で遺伝子組換えを実現しています。具体的には、中枢神経系での遺伝子組換えが神経細胞に特異的であることが確認され、末梢組織でも活発に機能することが明らかになっています。
研究の背景
Cre-loxPシステムを利用した遺伝子組換えは、生物学的プロセスや疾患の理解へ寄与しています。ナチュラルマウスには存在しないCreを特定の細胞で発現させるこの技術によって、研究者たちは組織特異的な遺伝子欠損を生み出すことが可能となりました。今回のRbfox3-iCreマウスは、成熟神経が発現するRbfox3遺伝子の3′非翻訳領域に、内部リボソーム進入部位(IRES)とiCreカセットをノックインすることで、新たな可能性を切り開きました。
実績と成果
研究チームは、この新しいマウスが出生率や体重に異常がないことを確認しました。さらに、Rbfox3-iCreマウスの成体脳内でiCreタンパク質の発現が見られ、RBFOX3タンパク質が正常マウスの約50%に減少していることが分かりました。しかし、脳重量や神経新生には影響を与えないことが確証されました。
このマウスを用いた遺伝子組換えの解析では、胚発生中に中枢神経系と心臓で活発に組換えが行われていることが示されました。成体脳では神経細胞での組換えが確認され、アストロサイトやオリゴデンドロサイトといったサポート細胞とは区別されました。末梢組織でも、坐骨神経や心臓、膀胱、精巣においても遺伝子組換えが観察されています。
未来の展望
研究によって明らかにされたこのRbfox3-iCreマウスは、中枢神経系の神経細胞、末梢神経、さらには一部の生殖細胞での遺伝子組換えを誘発することが確認されました。今後は、このマウスを研究者が遺伝子機能解析に利用し、さらなる研究を加速させることが期待されています。理化学研究所バイオリソース研究センターでも、研究者間での利用促進が進められています。
この革新的なマウスは、神経科学の研究に新しい旗印を立て、それにより多くの疾病理解や治療法の進展が期待されています。神経細胞以外でも心臓や生殖細胞にまで影響を及ぼす可能性があり、新たな成果を生むことが期待されます。
最後に
本研究は公益財団法人日本応用酵素協会やJSPS科研費の助成を受けており、今後もこの分野における重要な研究が続くことでしょう。研究者はこのRbfox3-iCreマウスの利用を通じて、より効果的な神経研究の道を切り開いてほしいと期待しています。