人手不足倒産の現状
2025年度上半期、すなわち4月から9月の間に発生した人手不足を原因とする倒産が、214件に達しました。この数字は、過去3年連続での最多更新となり、特に「道路貨物運送業」においては前年同期の19件から、今年は33件へと大きく増加しています。これに続き、老人福祉事業や労働者派遣業など、労働集約型の業種でも同様の傾向が見られます。
業種別の傾向
道路貨物運送業の増加に関しては、ドライバー不足が大きな要因とされています。多くの業者は受注の減少に直面しており、必要な人材の確保が困難な状況です。また、介護現場のスタッフ不足や派遣労働者の不足も影響を与えています。このように人手不足が深刻化する中で、企業は存続の危機に瀕しています。
コストの影響
さらに、企業はコストの高騰にも苦しんでいます。2023年7月に実施された価格転嫁に関する調査では、全体の価格転嫁率が39.4%と低下し、特に道路貨物運送業は28.6%と全業種平均から10ポイント以上少ないことが分かりました。これにより、経営が苦しくなり、利益確保が難しい状況が続いています。
最低賃金の引き上げ
2025年度の最低賃金は1121円と、昨年度から66円引き上げられ、過去最高の上昇幅を記録しました。この賃上げが続く中、小規模事業者はその負担を払拭できず、「賃上げ難型」の人手不足倒産が今後も高水準にあるとの懸念が広がっています。
労働市場の変化
企業が人材を確保するためには、ただ賃金を上げるだけでは不十分だと考えられます。労働者が選びたくなるような職場環境の整備、研修制度や福利厚生の充実が求められています。企業の魅力を向上させ、働きやすい環境を提供することが、今後の人手不足対策としての鍵になるでしょう。
まとめ
人手不足倒産の問題は、今後も企業や経済に深刻な影響を及ぼす可能性があります。政府や企業には、労働市場の現状をしっかり把握し、労働環境の改善に向けた取り組みが求められる時代が来ています。人材の確保は企業にとっての重要な課題であり、これを乗り越えるための戦略が急務とされています。