ロート製薬の新たな取り組み
ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:杉本雅史)は、動物実験を行わない製品開発に力を入れています。この度、名古屋市立大学(学長:浅井清文)と共同で、機械学習を駆使した眼刺激性評価の新手法を開発しました。この研究は、多くの化学物質の眼への危険性を評価できる可能性を広げます。
研究の背景
従来の眼刺激性評価では、動物実験に依存していましたが、近年では動物実験の代替法が求められています。OECDのテストガイドラインには、in vitro代替試験法が紹介されていますが、難溶性物質には適用できない場合が多く、革新的なアプローチが求められていました。そこで、ロート製薬と名古屋市立大学が協力し、化学物質の化学構造情報を基に眼刺激性を予測できるin silicoモデルを構築することを目指しました。
成果の詳細
本研究では、Draize試験の動物実験の代替法としてガイドライン化されたSTE試験法のデータを利用し、機械学習によって化学物質の眼刺激性を迅速に予測するモデルを開発しました。具体的には、勾配ブースティング決定木系のアルゴリズムを用いて、得られたデータから予測モデルを作成しました。
分析の結果、in vitro、in vivo、in silicoの評価がほぼ一致し、モデルの信頼性が確認されました。これは、化学構造情報のみを用いて眼刺激性を分類することができる画期的な成果です。
社会への影響
このモデルの導入によって、従来の眼刺激性テストにおける動物使用を削減し、難溶性物質や合成が困難な化学物質の安全性確認が期待されます。また、眼科用成分の候補を選定する際や、誤使用時の化粧品の危険性評価にも応用できる可能性があります。
今後の展望
ロート製薬は、今後も動物実験の代替法研究を進める方針です。コンピュータや情報技術を駆使したin silico毒性予測、培養細胞を用いたin vitro評価法など、多様な手法を活用してお客様に信頼性の高い製品を提供していきます。お客様のウェルビーイングに寄与するため、これからも研究開発に注力してまいります。
用語解説
- - in silico: コンピュータを用いたシミュレーション技術。
- - STE試験法: OECDが提唱する眼刺激性を評価する代替試験。
- - 機械学習: 大量のデータを分析し、予測を行う技術。
- - Draize試験: 動物を用いた眼刺激性評価試験。
- - GHS分類: 化学品の危険有害性を分類する国際基準。
今回の取り組みは、科学界だけでなく、一般消費者にとっても重要な意義を持つものです。今後もロート製薬の進展に注目です。