岡山大学の最新研究が明らかにしたイネのケイ素吸収
岡山大学の資源植物科学研究所に所属する研究グループは、イネのケイ素吸収を制御する重要なシグナルタンパク質「SSS(Shoot-Silicon-Signal)」を発見しました。このシグナルタンパク質は、茎葉から根へと移動し、根におけるケイ素吸収の促進に寄与することが確認されています。
研究の背景と意義
ケイ素は土壌中に広く存在する非必須元素で、一部の植物に有益な効果をもたらすことが知られています。特にイネなどのイネ科植物は、その吸収力を生かして耐ストレス性を向上させていますが、これまでその制御メカニズムは謎のままでした。
本研究では、シグナルタンパク質SSSが根へのケイ素吸収を調整する仕組みが解明され、これによりイネのケイ素吸収のメカニズムに一歩近づくことができました。この発見は、持続可能な農業の実現に向けた新たなアプローチとして注目を集めています。
重要な研究成果
1. SSSタンパク質の発見
研究チームは、イネの地上部で発現するSSSが、根へのケイ素の供給を促進させる役割を果たすことを明らかにしました。このシグナルは、根が必要とするケイ素を効果的に吸収できるよう制御するフィードバックシステムとして機能します。
2. DIYインセクトレーザー法
さらに、研究グループはDIYインセクトレーザー法を開発し、篩管液中のタンパク質の検出にも成功しました。この技術の開発により、イネのケイ素吸収メカニズムの詳細が解明されるとともに、高い応用可能性が期待されます。
今後の展望
この研究成果は、イネ科植物のケイ素施肥の最適化や、より高効率でケイ素を蓄積できる新しい作物品種の開発に貢献するものと考えられています。また、持続可能な農業の実現に向けた貴重な手がかりを提供するでしょう。
研究グループのコメント
山地直樹准教授は、研究論文の最終原稿を岡山マラソンの翌日に投稿したことを説明しました。マラソン当日は、大盛りのカレーライスを召し上がり、完走後にはビールを楽しんだそうです。このビールもケイ素を多く含んでいる大麦麦芽から作られています。
今回の研究結果は、2024年12月27日付の英国・Nature Communicationsに掲載されることが決まり、さらなる注目を集めています。この発見をもとに、今後の農業の発展に期待が寄せられています。
論文情報
- - 論文名: Shoot-Silicon-Signal Protein to Regulate Root Silicon Uptake in Rice
- - 掲載誌: Nature Communications
- - 著者: Naoki Yamaji, Namiki Mitani-Ueno, 他
まとめ
岡山大学の研究は、イネがケイ素を効率的に吸収するメカニズムを解明し、農業の持続可能性を高める可能性を秘めています。この新たな発見は、農業界にとって革新をもたらす重要なステップとなるでしょう。