物価変動と社会厚生の関係を探る新たな視点

はじめに

物価変動は、マクロ経済学において長年にわたり研究されている重要なテーマの一つです。本記事では、物価変動のコストとベネフィット、さらには望ましいインフレ率に関する議論の傾向について考察します。

物価変動の意義

物価の変動は、社会厚生に及ぼす影響が大きいため、そのメカニズムの理解が求められています。1990年代以降、多くの国でインフレ目標政策が導入される中で、物価変動が経済活動や社会に与える影響についての検討が進んでいます。特に、物価上昇率が社会厚生にどのように影響するのかという問いがここでも注目されています。

物価変動のコストとベネフィット

物価変動についての議論は主に、(1) インフレに伴うコスト、(2) 価格変動に伴うコスト、(3) デフレや低インフレに伴うコスト、(4) その他の視点に分類されます。特に、1990年代には、貨幣保有の機会費用を指摘する研究が主流でした。

インフレのコスト

1990年代には、インフレの影響を重視した研究が多く見られました。この時期、物価の上昇が貨幣の実質価値を減少させ、結果的に有効な資源配分を妨げるとの指摘がなされました。また、当時の税制が名目所得に課税するため、インフレの影響下では実質的な税負担が増加するとの意見もありました。

価格変動のコスト

2000年頃からは、価格硬直性を考慮したニューケインジアンの考え方が広まり、価格が変動しないことの重要性が強調されるようになりました。これにより、一般物価の変動が社会的なリソースの歪みを引き起こす危険性が議論されるようになります。

デフレと低インフレの影響

2008年の世界金融危機以降、デフレや低インフレの問題が急浮上しました。この頃、自然利子率の低下により、経済の安定性が損なわれる危険性が指摘され、金融政策の有効性が疑問視されるようになりました。また、名目賃金の下方硬直性が失業を増加させる可能性も議論になっています。

望ましいインフレ率に関する最近の見解

近年、一部の研究では、物価の緩やかな上昇が社会厚生にとって望ましい可能性が示唆されています。特に製品や企業の異質性を考慮することが、その背景にあることが指摘されています。このように、望ましいインフレ率については未解決な問題が多く残されていますが、今後の研究により明らかになっていくことが期待されています。