豊田理化学研究所が新たに設立した「ライジングフェロー制度」は、将来の学術を担う若手研究者に対し、最大5年間で1億円の研究助成金を提供するという画期的な制度です。この制度は、将来的に一流の研究成果を上げることが期待される新進気鋭の研究者を対象とし、特にその人物としての面も重視して選考されます。
2024年度に向けて、2023年2月から4月にかけて募集が行われ、その結果、過去の豊田理研スカラー経験者から66名が応募。フェロー選考委員会によって厳正な選考が行われ、見事選ばれた3名の若手研究者が、初年度のライジングフェローに決定しました。
選考を行った委員会は、自然科学研究機構の川合眞紀委員長をはじめ、理化学研究所・藤田誠教授、外務大臣科学技術顧問・松本洋一郎、分子科学研究所の渡辺芳人所長など、著名な研究者たちで構成されています。
ライジングフェロー制度の特徴
この制度は、単なる助成金にとどまらず、対象研究者の活動を支援しながら、国際的な研究競争力やダイバーシティを高めることを目指しています。選ばれた研究者には、資金提供だけでなく、豊田理研が持つリソースやネットワークも活用し、研究の質を向上させるための環境が整えられています。
2024年度フェロー受賞者
2024年度のライジングフェローに選ばれたのは、以下の3名の研究者です。各研究者は独自の研究テーマを持ち、自身の分野で新たな挑戦を進めています。
- - 大野真之(おおのさねゆき): 東北大学多元物質科学研究所准教授であり、「アニオンの複合化で拓く固体イオニクスのフロンティア」の研究に取り組んでいます。固体イオニクス材料の新たな設計指針を探求し、革新的な材料の創出を目指します。
- - 後藤佑樹(ごとうゆうき): 東京大学大学院理学系研究科准教授で、「ハイブリッド擬天然物ペプチド戦略の推進」をテーマに、創薬に向けた新たなアプローチを模索中です。実用的なオリジナル化合物の創出を目指し、研究を進める姿勢が評価されました。
- - 朴昭映(ぱくそやん): 大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任准教授であり、生体分子を基盤とした新しい薬剤の開発に従事しています。疾患に特異的に作用する分子標的医薬品の開発を通じて、日本の創薬力を向上させる貢献が期待されています。
豊田理研の歴史と未来
豊田理化学研究所は、1940年に設立され、日本の独自の科学技術の振興を目指して長年にわたり研究活動を行ってきました。最近では特に若手研究者の育成に力を入れており、今回のライジングフェロー制度もその一環として位置付けられています。
なお、次回の豊田理研スカラーの募集は2023年11月に予定されており、これからも若手研究者の成長を支援するための取り組みが続けられます。ライジングフェロー制度は、若手の研究者たちに新しい機会を提供し、日本の研究環境をより豊かにしていくことが期待されています。