早稲田大学が果たしたテラヘルツ帯無線通信の新たな高み
早稲田大学理工学術院の川西哲也教授率いる研究グループが、テラヘルツ帯に対応した無線通信システムの試作に成功し、長距離・大容量のOFDM無線伝送を実現しました。この研究は、移動通信システムの進化へ大きな一歩を踏み出したと言えます。
テラヘルツ帯の可能性
テラヘルツ帯とは、主に周波数100GHzから10THzまでの電磁波領域を指し、この範囲には無線通信に使用できる複数の周波数帯が存在しています。特に286.2GHz帯を活用した今回の研究では、70mの距離にわたるリアルタイム無線伝送が行われ、伝送速度は8.19Gbpsに達しました。この高速度は、次世代移動通信システムであるBeyond5G/6Gにおいて重要な役割を果たすと期待されています。
超高速通信の実験内容
早稲田大学の戸山キャンパスにある早稲田アリーナ内で行われた実験では、72.4mの距離での伝送が確認されました。これにより、OFDM技術を用いた大容量通信として世界トップクラスの距離を示しました。特に、周波数帯286.2GHzにおけるこの成功は、テラヘルツ帯を利用したデータ伝送における可能性を大いに広げるものです。
研究の背景
従来のマイクロ波帯(3GHz~30GHz)やミリ波帯(60GHz)では、利用できる周波数帯域が限られていたため、通信速度は数百Mbpsから数Gbpsにとどまっていました。しかし、テラヘルツ帯はその帯域幅の広さから、これまでにない通信速度を実現できる環境を提供します。特に、300GHz帯を利用した研究開発が近年活発になっており、実用化が近づいています。
今後の展望
川西教授の研究グループは、今後の課題としてビームステアリング技術の向上やMIMO技術を取り入れた通信容量の拡大を計画しています。これは、スタジアムなどでも活用される商業的価値が期待される無線ネットワークの実現に向けての重要なステップです。
このように、早稲田大学の成果はテラヘルツ帯による無線通信についての新しい理解を提供し、未来の通信インフラの底上げにつながることが期待されます。さらに、無線通信の特性を活かすことで、様々な分野での応用が可能となります。観光業、スマートシティ、医療分野など、私たちの生活を変える新たな技術が実現するのも時間の問題です。
この研究は、NICTやJSTの支援を受けて行われたもので、今後もさらに発展していくことでしょう。テラヘルツ帯通信の未来に注目が集まります。