渋谷の老舗サロン「ムジカーザ」で聴く、明治時代の音楽文化: 日本のクラシック黎明期を探る
「ムジカーザ」は、渋谷区・代々木上原にある、クラシック音楽専門のサロンです。コンクリート打ちっ放しの外観が特徴的なこのホールでは、毎夜様々な演奏家によるコンサートが開かれています。
中でも、ピアニストの黒田珠世氏が主宰する「ムジカーザ・コンサート」は、年間6回のシリーズで、その年の楽壇の最前線を味わえる人気のイベントです。
今年の7月23日(火)には、ピアニスト/作曲家の山田武彦氏がプロデューサーを務めるコンサートが開催されます。山田氏は、ソプラノ歌手の宮地江奈氏、ヴァイオリン奏者の甲斐史子氏と共に、「日本のクラシックの夜明け」を探訪するとのことです。
明治時代の音楽文化: 西洋音楽と邦楽の融合
江戸時代の終焉とともに明治時代が到来し、日本は近代化・西洋化を目指しました。音楽文化においても同様の変化が起こり、西洋音楽が日本に初めて紹介されます。
政府は、アメリカやドイツから音楽家を招聘し、西洋音楽を日本に導入しました。しかし、同時に日本の伝統音楽である雅楽や邦楽も大切にしたいという考えがありました。そこで政府は、「和洋折衷」という方針を打ち出し、西洋音楽と邦楽を融合させ、学校教育を通じて次世代に伝えていこうとしました。
「日本のクラシックの夜明け」を体感するコンサート
今回のコンサートでは、明治時代の音楽文化を反映したプログラムが用意されています。
幸田延という女性は、日本で初めての官費留学生としてオーストリアで音楽を学び、卒業演奏会でピアノ、ヴァイオリンに加えて箏も演奏したそうです。山田氏は、この演奏会を再現することを目指し、コンサートに箏曲を取り入れています。
また、大正時代に流行した「浅草オペラ」についても触れられています。クラシック音楽、ジャズ、邦楽、歌謡曲が混ざり合い、大きなエネルギーを生み出した「浅草オペラ」は、関東大震災で衰退してしまいましたが、昭和の芸能史において重要な役割を果たしました。山田氏は、近年「浅草オペラ」を研究しており、定期的に浅草東洋館で公演を行っています。今回のコンサートでは、イギリスのコミックオペラ「軍艦ピナフォーア」が披露されます。
現代の音楽文化への示唆
現代の音楽文化は、ストリーミングサービスなどを通じて様々な音楽に触れることができるようになりました。山田氏は、この現代の音楽文化と、明治時代に様々な音楽が混在していた状況が似ていると考えているようです。
今回のコンサートでは、瀧廉太郎や山田耕筰の作品、賛美歌、スコットランド民謡、CM音楽など、多様なジャンルの音楽が演奏されます。これらの音楽を通して、明治時代から続く日本の音楽文化の進化を感じることができるでしょう。
コンサート情報
第170回ムジカーザコンサート
山田武彦プロデュースシリーズⅠ
黎明期の洋楽事始とその後〜日本の洋楽受容を探ろう
日時: 2024年7月23日(火) 19:00開演(18:30開場)
会場: ムジカーザ
プログラム:
サリヴァン:喜歌劇「ミカド」より
六段(伝八橋検校作、ボックレット編)
伊澤修二:祝日大祭日唱歌「紀元節」
幸田延:ヴァイオリンソナタ第2番
ディートリッヒ:日本行進曲「YOI!」
瀧廉太郎:荒磯
山田耕筰:かちどきと平和より
宮城道雄:春の海
プロコフィエフ:行進曲
ジンバリスト:日本の調べによる即興曲
サリヴァン:喜歌劇「軍艦ピナフォーア」より
ジャズ漫談「ほっときなさい」浅草編
マスネ:妖精のアリア他
チケット:
〈パーティ付き/終演後〉一般¥8,000 学生¥5,000
〈コンサートのみ〉一般¥5,000 学生¥2,500
*全席自由、学生25歳以下
問合/予約: ムジカーザ Tel. 03-5454-0054
ホームページ: ムジカーザホームページ
今回のコンサートは、明治時代の音楽文化を体感できる貴重な機会です。ぜひ足を運んでみて下さい。