三井住友銀行が体感する生成AIによる生産性向上
近年、金融業界においてシステムの高度化や複雑化が進む中、基本システムのインフラのバージョンアップ作業は避けて通れない課題となっています。特に、システムバージョンアップに伴う非互換性の特定とその対応は、時としてシステム停止などのリスクを伴い、金融機関にとって大きな負担となります。
このような問題への解決策として、日本総合研究所(以下、日本総研)と富士通株式会社(以下、富士通)は、株式会社三井住友銀行(以下、SMBC)のシステムバージョンアップを支援するため、生成AIを活用した共同実証を行いました。
実証の背景
金融機関は、その経済的な安全性を保つ必要があるため、インフラの非互換性を迅速に特定し、適切に対処する必要があります。しかし、従来の手法では非互換性の確認に大量の時間を要し、目視確認や手作業に頼る部分が多く、効率が非常に悪いものでした。
大規模金融システムの保守のためには、より効率的なアプローチが求められています。そこで、両社は生成AIを利用し、これに新たな可能性を見出しました。
共同実証の進行状況
2024年11月5日から始まった実証は検証フェーズと呼ばれる段階にあり、この期間中に両社は富士通の開発した生成AIベースのシステムを用いて、約400の非互換情報を抽出することに成功しました。これにより、従来の方法に比べて情報抽出にかかる時間を約65%も短縮することができたのです。
この中から、特にC言語やbashシェルによって記述されたアプリケーション410キロステップに影響を及ぼす非互換情報が特定され、より詳細なアプローチが可能となりました。
2025年1月16日からは、実行フェーズに移行し、生成AIを使い、非互換情報を基にアプリケーションの修正を進めています。これにより、さらなる効率化が期待されています。
将来への展望
日本総研は、得られた知見をもとにSMBCグループにおける他のシステム開発プロジェクトへの適用を模索しており、さらなる生産性の向上と安定稼働を目指しています。また、富士通はこのプロジェクトを通じて得たノウハウを活かし、様々な業界のシステム開発・保守の問題解決に貢献することを目指しています。
結論
今回の共同実証により、日本の金融業界におけるシステムの進化が期待され、生成AIが持つ可能性が高く評価されています。生産性向上とシステムの安定性の両立は、今後の金融機関の課題解決に向けた重要な一歩と言えるでしょう。