事業存続型倒産の現状
近年、企業の倒産が増加している一方で、倒産後に事業を継続する企業の割合が高まっています。特に、2014年度から2023年度の10年間で、1549件の企業が「事業存続型倒産」として企業名を挙げました。この調査によると、事業存続率は33.6%に達し、過去10年間に負債5億円以上で倒産した4611件中の3社に1社が事業を継続したことが示されています。
増加する倒産件数と企業の存続
2023年度には法的整理による倒産件数が8881件に達し、前年より30.6%増加しました。これは新型コロナウイルス感染症の影響やリーマン・ショック以来の経済的打撃が影響していると考えられます。その中でも、特に目を引くのは企業が倒産した後も事業を存続させようとする動きです。2024年3月に政府が発表した「再生支援の総合的対策」では、経営改善策や自主再建に重点を置く方針が打ち出されています。これにより、法的整理を利用して債務を軽減し、事業や雇用を守る手段が広がっています。
業種別の事業存続率
業種別に見ても、特に「サービス業」において事業存続率が44.4%と突出しています。次いで「製造業」が37.3%、そして「小売業」が38.2%という結果が出ています。中でも、旅館業は150件の事業存続型倒産を記録し、特に高い割合(最大229件)の倒産を抱える業種となっています。これらの業種が事業を存続しやすい理由は、宿泊施設やブランドの価値が認められ、法的な整理の後にも事業価値が評価されるからです。
地域別の傾向
地域別では、北陸地方が唯一事業存続率が4割を超え、55.6%に達する福井県が最高の存続率を誇っています。これに対し、関東地方では数が多いものの、事業存続率は低い傾向があります。特に地方の企業は地域経済を支える役割が大きく、事業存続に対する意識が高まっています。
倒産手続きの進化
また、倒産手続きの種類別に見ていくと、「民事再生法」の事業存続率が83.2%と高く、企業が消滅する「破産」でも366件で何らかの形で事業が存続しています。これは、金融機関や再生ファンドの関与が影響し、企業が新陳代謝しやすくなっていることが背景にあります。
雇用の維持と地域経済への影響
この調査から明らかなように、事業存続型倒産は単に企業の経営だけでなく、その従業員の雇用にもポジティブな影響を与えます。従業員規模が大きいほど事業存続率が高くなり、300人以上の企業では77.4%が事業を継続しています。これは、企業を通じて地域の雇用を守る意義を示しています。
倒産が増加する中で、企業が進化し続けるその姿勢は今後の経済にも重要な示唆を与えています。新たな再生支援策や業界の変化により、様々な手法が用意され、地域経済を支えるための新しい道が切り開かれることが期待されているのです。