CRRAが1億円を調達し産業用DAC装置の商用化を加速
25歳の化学技術者である村木風海が率いる炭素回収技術研究機構株式会社(以下CRRA)は、1億円以上の資金調達に成功した。これにより日本初のDAC(直接空気回収)企業として、産業用中型DAC装置『ひやっしーパパ』の実用化が加速される。
資金調達の概要とCRRAの役割
本調達は、エクイティやデットファイナンスを組み合わせて行われ、プライム上場企業である株式会社東海理化など70名を超える個人・法人投資家からの出資を受けたもの。CRRAは、あらゆる分野でCO₂を回収し、持続可能な社会を実現するための独立系研究機関として特化した活動を行っている。
DAC技術の重要性
CRRAの開発するDAC技術は、気候変動対策の一環として注目を集めている。DACは大気中からCO₂を直接回収する唯一の技術であり、その効果的な普及は喫緊の課題である。村木は2010年からこの技術に注目し、約10年の研究を経て、CRRAとしての基盤技術の開発を続けてきた。
小型化のメリット
従来のDAC装置は大型プラントが主流であったが、その普及に課題があった。CRRAはこの問題を受け、小型DAC装置を開発し、日常生活空間への設置を可能にする手法を模索。これにより、生活者が自らCO₂を回収する体験が可能となり、社会的な意識を変える契機になると期待されている。
新たな装置『ひやっしーパパ』
新たに発表された『ひやっしーパパ』は、CO₂の回収量を大幅に増やしつつ、強力なコンパクト性を保持している。使用される次世代型CO₂吸収剤「アミン修飾メソポーラスシリカ」は、高密度に活性化された多孔質構造で、CO₂を効率的に吸着する性能を有している。これにより、使用される温度が60℃という低温での脱離が可能で、高効率なCO₂回収を実現する。
導入が進む市場戦略
CRRAは、飲料・酒造業や農業など、CO₂の需要が高い業界を主要ターゲットとして定量的な脱炭素施策を推進。未開拓の小型DAC市場に注力し、国内外の企業と協働することでDAC市場全体の拡大を目指している。
社会への影響
CRRAの取り組みは、単なる技術革新にとどまらず、CO₂を資源として捉え、経済価値に変換する新しいモデルを提案している。回収したCO₂は、売炭素モデルにより、企業にとって新たな収益源となり得る。村木は、CO₂回収を身近な話題にすることを目指しており、幅広い社会の意識を変えるきっかけになると考えている。
今後の展望
CRRAは、今後2.5億円規模の新たな資金調達を計画しており、その資金を使用して『ひやっしーパパ』の製造と概念実証を実施する予定だ。また、CO₂からエチレンなどの化成品を生み出す「CO₂利活用」や、回収量に応じたデジタル通貨への転換をも視野に入れている。
結論
CRRAの取り組みは、CO₂を単なる廃棄物と捉えるのではなく、資源としての新たな価値を見出すことにつながる。これにより、企業や地域社会全体が気候変動問題に対して積極的に取り組む姿勢が促進されることを期待したい。