新しいコーティング技術「SinTaC®」の革新
株式会社豊田中央研究所が発表した新しい技術「SinTaC®」は、パワー半導体材料である炭化ケイ素(SiC)の結晶生成に不可欠な黒鉛ルツボに適用され、ルツボの劣化を抑制することが期待されています。この技術は、炭化タンタルによる厚膜コーティングを用いて、SiCの生産コストを削減し、環境負荷を低減することに貢献します。
SiC製造の課題
SiCは、パワー半導体の中でも高温耐性や電力変換効率に優れた材料として注目されています。しかし、その製造には高価な黒鉛ルツボが必要で、高温(約2000℃)での加熱中に発生するガスや化学反応により、ルツボが腐食し、劣化する問題があります。これにより、ルツボは一回の使用で廃棄されることが一般的です。
SinTaC®技術の革新性
SinTaC®は、黒鉛ルツボ全体に炭化タンタルの厚膜コーティングを施すことで、耐腐食性を向上させ、ルツボの内面へのSiC結晶の固着を抑える効果が確認されています。特に、コーティングに追加の処理を施すことで、SiCが固着しても容易に剥がれる特性を実現。これにより、ルツボは再利用が可能となります。
研究のポイント
- - 膜厚の一様性: 炭化タンタルのコーティングは膜厚が薄いとひび割れが生じる可能性があるため、均質な厚膜の形成が重要です。
- - スラリー材料設計: スラリー材料の最適化により、均質かつ厚膜化を実現し、コーティング技術(SinTaC®)として確立しました。
- - 表面粗さの低減: SinTaC®技術において、表面粗さを低減する処理を加えることで、目的の場所以外へのSiCの固着を抑制することが可能です。
結果と期待される成果
SinTaC®の導入により、ルツボの再利用が可能になることで、SiCの製造コストは大幅に削減されます。また、使用される材料の量も減少し、環境に対する負荷を軽減する効果も期待されています。持続可能な技術革新の一環として、この新技術は業界全体に広がりを見せることが予想されます。
今回の豊田中央研究所の技術開発は、パワー半導体の製造プロセスを根本的に見直し、効率的で持続可能な製造が実現される可能性を示唆しています。このような技術が進化することで、未来のエネルギー市場での競争力がますます高まるでしょう。