環境に優しい新技術:京都大学と三生医薬の共同研究
2025年3月に札幌で開催される日本農芸化学会大会において、京都大学と三生医薬株式会社が共同研究した新たな制造技術が発表される。これは、3Dプリンティングを利用して、植物由来のソフトカプセルを製造する技術だ。この技術は、従来の動物由来の原料を一切使用せず、大豆タンパク質を主成分にしているため、環境負荷を軽減できることが期待されている。
研究の背景
近年、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが求められる中で、食の安全性や環境問題に対する関心が高まっている。特に、動物由来成分の使用は、倫理的な観点からも批判を受けている。ゼラチンカプセルなど、動物性原料を用いる従来技術は、効率的かつ柔軟な製造が可能な一方で、環境負荷が大きな課題であった。
それに対抗すべく、京都大学大学院農学研究科の小林敬助教は、三生医薬と2023年から共同研究を開始。大豆由来の植物性タンパク質を用いることで、新しいカプセル製造技術の開発を目指した。
提案された製造技術
今回発表された技術では、3Dプリンティングの熱溶融積層方式(FDM)が利用されている。この技術により、形状やサイズの自由な設計が可能になるため、個々のニーズに応じたカスタマイズが実現される。また、有機溶媒を用いない製造プロセスは、さらなる環境負荷の削減につながることが示唆されている。
研究発表において、テーマは「大豆タンパク質フィルムの製膜における水分活性の影響」だ。この研究では、カプセルとしての機能性を考慮しつつ、製膜技術の改良が試みられている。
研究結果と将来展望
主な研究成果としては、以下の点が挙げられる:
- - 植物性タンパク質を主成分としたカプセル技術の確立
- - 動物性原料不使用であるため、ヴィーガン対応
- - 環境に優しい製造プロセスを実現
今後の展望としては、食品や医薬品向けソフトカプセルとしての応用に加え、生分解可能な包装資材としての可能性も視野に入れ、さまざまな企業や研究機関との連携を進める計画がある。特に、3Dプリンティング技術を活用することによって、新しい製造ラインの開発やサステナブルパッケージングとしての活用も視野に入れる。
学会での反響
この技術に対する関心は高く、既存のカプセル製造技術との違いや、さらなる研究の必要性について議論が交わされた。動物性原料の代替技術は、多くの産業に影響を与える可能性があり、実現が期待されている。
企業の意気込み
三生医薬の常務取締役である又平芳春氏は、「持続可能な新技術の開発に取り組んでおり、これにより健康食品や医薬品における環境配慮型製品の普及に貢献したい」と述べている。さらに、「企業との共創を通じ、さらなる技術開発を進めていく」との意気込みを語った。
一方、京都大学の小林敬助教も「この研究は新たな食品科学やバイオマテリアル分野における可能性を切り拓く重要な取り組みです」と語り、さらなる研究の深化と実用化を道筋としている。
この新技術は、未来の製剤技術として、さらなる環境意識の高まりを背景に広く受け入れられることが見込まれている。