株式会社北三陸ファクトリーが農林水産省の中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)における第2回公募で、約9.2億円の交付決定を受けました。この事業では、「ウニの短期実入改善システムの構築及び輸出実証」をテーマに掲げ、新しい生産・流通システムの開発に取り組むことになります。プロジェクトは2024年度から2027年度にかけて実施され、岩手県洋野町に実証プラントを導入してウニの陸上養殖技術を確立し、高品質な国産ウニをグローバル市場に提供することが目指されています。
現在、日本産ウニの需要は海外で高まっており、多くの市場での流通が期待されている一方、国内では「磯焼け」の影響で、ウニが痩せて成長する傾向があります。北三陸ファクトリーでは、特に高品質なウニの供給を確保するために、北海道大学大学院水産科学研究院と共同で開発した「うに再生養殖技術」の普及に尽力しています。この技術は、駆除や廃棄が進められていた実入りが悪いウニを短期間で育て直すもので、改善後は天然ウニと変わらない美味しさを実現することに成功しています。
特に、プロジェクトにおいては、ウニ養殖用の特許技術として、特殊な飼料「はぐくむたね®」が用いられ、さらに特許取得済みの生簀や水槽による効率的な育成方法が採用されます。これにより、ウニは秋冬でも安定して出荷できるようになるため、年間を通じて消費者に高品質のウニを届けることが可能になります。この計画を通じて、北三陸ファクトリーは、2018年の設立以来、持続可能な水産業に向けた取り組みを加速させています。
また、北三陸ファクトリーは、国際市場においても積極的に展開を行っており、環境に配慮した漁業や養殖場から調達したシーフードを提供する大手スーパーとの商流も確立しています。2023年には、ドバイで行われたGulfoodのイノベーションアワードにおいて、同社の「洋野うに牧場四年うに」と「うにバター」が最終ノミネートされ、これをきっかけに海外での知名度も高めています。
岩手県洋野町に拠点を置く北三陸ファクトリーは、このプロジェクトを通じて「北三陸から、世界の海を豊かにする」というミッションを実現すべく、今後も持続可能で高品質なシーフードの生産に努めていく所存です。2023年にはオーストラリア法人も設立し、さらなる事業展開を進める中で、確かなサステナブルシーフードの価値を広めていくことでしょう。