下水汚泥ガス化で下水処理の未来を変える!日立造船と産総研が鹿児島市で実証実験開始
日立造船株式会社と産業技術総合研究所(産総研)は、共同研究中の下水汚泥ガス化技術の実証実験を、鹿児島市南部処理場にて開始することを発表しました。この革新的な技術は、下水処理の消費電力削減とグリーン化に貢献し、持続可能な社会の実現に向けて大きく前進する可能性を秘めています。
下水処理の課題:エネルギー消費と汚泥処理
下水処理場では、水処理工程における曝気装置など、多くの電力を消費しています。一方で、下水処理場から発生する大量の下水汚泥は、エネルギーとしての利用率が低いのが現状です。また、従来の消化処理で発生する消化汚泥の処理も課題となっています。
下水汚泥から水素などの燃料ガスを生成
日立造船と産総研は、2020年から共同で、下水汚泥を直接ガス化して水素などの燃料ガスに転換する新型ガス化改質システムの開発に取り組んできました。この技術は、消化処理を経ずに、下水汚泥からエネルギーを効率的に回収することを可能にします。従来技術では、副生するタールが配管に付着して閉塞する課題がありましたが、日立造船と産総研が開発した独自の循環流動床装置は、タール改質機能を備え、安定した運転を実現しました。
鹿児島市南部処理場で本格的な実証実験へ
実用化に向けた新たなステップとして、2024年10月からは、鹿児島市南部処理場で、2トン/日規模のパイロットプラントを設置し、2026年3月までフィールド試験を実施します。この試験では、得られた燃料ガスの電力利用を主な目的として、ガスエンジンによる下水汚泥ガス化発電プロセスに関するトータルシステムの検証を行います。
下水処理のグリーン化と未来への展望
本システムが実用化すれば、消化汚泥の処理が不要となり、汚泥由来の燃料ガスを発電に利用することで、下水処理場の電力を自給することが可能になります。これは、下水処理のグリーン化に大きく貢献し、脱炭素社会の実現に近づく一歩となります。さらに、水素社会の実現や、素材としてのケミカルリサイクル利用など、未来を見据えた取り組みを進めていく予定です。
国土交通省「グリーンイノベーション下水道」との連携
下水汚泥のエネルギー化は、国土交通省が掲げる「グリーンイノベーション下水道」の取り組み施策の一つとして位置付けられています。日立造船は、これまでごみ焼却で培ってきたストーカ式での下水汚泥焼却技術開発に加え、今回の実証実験を通して、下水汚泥のエネルギー化に積極的に貢献していきます。