移動体データの国際規格が発行される
近年、測位技術の進化に伴い、様々な移動体—人、車、さらには自然現象(台風など)の位置情報が大量に収集されています。これらのデータは、環境モニタリングや交通管理、災害時の避難誘導など多岐にわたる分野で活用されることが期待されています。特に、近年発表されたOGC(Open Geospatial Consortium)の新しい国際規格「OGC API - Moving Features - Part 1: Core」は、移動体の位置データをより便利に利用できる道を開きました。
あらゆる移動体のデータを標準化
新たに発行された本規格は、移動体データへのアクセスと共有を効率的に行うための標準的なウェブサービスインターフェースを提供します。これにより、異なるソフトウェアやシステム間での情報のやりとりがスムーズになり、企業や組織が独自に運用するサービスの連携を深める助けになることが期待されます。
本規格は、移動する対象が持つ属性や時間による変化を反映したデータの収集を可能にします。例えば、信号を考慮した車両の動きや、特定時間における台風の気圧情報など、さまざまな動的属性情報を取得できます。これにより、交通管理の精度向上や災害対策の強化が図られます。
オープンスタンダードで社会課題に挑む
OGCは大学、企業、政府機関など多様なステークホルダーが参加する国際的な組織であり、今回の規格は地域の課題解決にも寄与します。日本国内でも、既に産業技術総合研究所(産総研)がOGCの活動に参加し、移動体データの標準化に貢献してきました。そのため、地域の特性を生かしたSmart Cityの実現に向け、移動体データの相互運用性を高めることで、新たな価値を生み出すプラットフォームが構築されることも期待されています。
さらに、データ提供者は複数のデータソースからの情報を統一的なインターフェースを通じて容易に利用可能になり、移動の予測や衝突検知、最適化が実現可能になるため、スマートな移動体験が可能になるでしょう。
規格発行までの道のり
産総研は、これまでに発行された移動体データに関するISO標準やOGC Moving Features Accessに関与し、これらの規格を基にさらに具体的な技術的手法を作り上げ、今回のOGC APIの発行に結びつけました。特に、国際的な連携を図りながら、試行錯誤を重ね、多くの関係者の協力を得て新しい規格が開発されました。
未来に向けた展望
今後、OGCでは3つのパート「ストリーム」、「フィルター」、「プロセス」の開発を進め、次世代モビリティサービスの普及と市場拡大を目指します。これにより、我々の生活がより便利で安全なものに変わり、持続可能な社会への足掛かりとなることが期待されています。新たなモビリティサービスによる未来の姿を描くための第一歩には、これまで以上に皆が協力して進んでいく必要があるでしょう。
新しい国際規格の導入がもたらす未来の影響や付加価値は、私たちの生活様式を根本から変える可能性を秘めています。地理空間データの効率的運用が実現する未来に、期待が寄せられています。