オメガ3脂肪酸の合成技術と新たな抗炎症脂肪酸の発見
世界初の完全固相合成法
東京大学の研究チームが、多価不飽和脂肪酸の完全固相合成法を開発し、オメガ3脂肪酸を合成できる技術を確立しました。この研究は、藤田助教、秋田大学院生、山東教授などの知見を基に行われました。
これまで多価不飽和脂肪酸は、合成に多くの時間と手間を要するため、研究や創薬においての壁でした。しかし、今回の成果により、合成が迅速かつ効率的に行えるようになり、さまざまな応用が期待されています。
新しい抗炎症性脂肪酸『Antiefin』の発見
新しい合成技術を使い、本研究チームは18種類の多価不飽和脂肪酸を合成し、その中から新しい抗炎症性脂肪酸『Antiefin』を見出しました。この脂肪酸は、従来のものよりも少ない濃度で強い抗炎症効果を示し、実験ではわずか10 ngを使用するだけで炎症が抑制されました。
今後の展望
開発された合成法は、データ駆動型生命科学研究の進展を可能にし、脂質創薬の分野にも貢献することが期待されます。脂肪酸の研究が進むことで、さらなる生命機能の理解や新しい医療技術の発展が見込まれます。
研究の意義
多価不飽和脂肪酸、特にオメガ3系の脂肪酸は、体内で重要な役割を果たしていますが、それを効率よく合成する方法はこれまでありませんでしたが、今回の研究により、製造が容易になるとともに、抗炎症性の新しい脂肪酸が見つかったことは、創薬科学において大きな意義を持ちます。
この発見は2025年6月25日に「Nature Chemistry」に発表される見込みで、その後、脂質科学の新たな潮流を形作る期待が寄せられています。