「甘く、ポップで、ファンシーなアイス、甘〜くとろけるアイスの感覚!」
これは、セラミックアーティスト川井雄仁が自身の個展「クローズアップ現代陶芸〜わたしがおぢさんになっても〜」で表現したい世界観の一部だ。11月14日から12月1日まで、原宿のZERO BASE神宮前で開催されるこの個展では、川井自身の部屋とセラミック作品が融合した空間が展開される。
川井は、2023年に「Heart on Wave」がヴィクトリア&アルバート博物館に収蔵され、11月下旬にはKOGEI Art Fair Kanazawaにも参加するなど、注目を集めているアーティストだ。2025年にはKOTARO NUKAGAでの個展も予定されており、今後の活躍が期待されている。
今回の個展では、未発表作品を含む新作4点を展示。川井は自身の作品を通して、失われた裏原文化へのノスタルジー、子供部屋おじさんの問題、ミッドライフクライシスの問題、パブリックアートへの批判、陶器作品のカテゴライズ問題など、様々なテーマを提起している。
「この展示は街と展示空間、展示空間と作品が入れ子になるような二重の構図でできている。陶器で作られた私の作品は、最奥の自分を表出しているのか、作品に現れる自己とはなんなのか。最もプライベートな空間である自室に作品を展示することでその問いを実証しようという、いわば個人的な探究心から始まったプロジェクトである。」
川井自身の言葉からもわかるように、この個展は、単に作品を展示するだけでなく、川井自身の内面、そして現代社会における様々な問題を深く掘り下げる試みと言えるだろう。
個展のキュレーションを担当した秋元雄史氏は、川井を「永遠の迷子」と表現し、原宿という場所との関係性について次のように語っている。
「川井は、1984年生まれである。青少年期を90年代から2000年代初頭に経験した。この時代は、俗にいう「失われた30年」である。日本が迷走し続けてきた時代の只中を生きた。
その時代の原宿に川井は憧れたという。明るくファンシーで夢に溢れた原宿には真実がある、そのように思えたからだ。嘘まみれの世界の中で若者を救う場所、キラキラと輝く聖地、可愛く、明るい原宿。そこは川井の夢の場所であった。
そこでの展覧会である。川井が乗らないわけがない。
考えあぐねた末に出した答えは、素のままの自分を曝け出すこと。自分の生活丸ごとを原宿という街にぶつけ、作品と共にそれを開陳すること。川井の混沌とした暮らしぶりをそのまま原宿の街中に晒すことであった。」
原宿という場所への憧憬と、自身の生々しい姿を曝け出すことへの葛藤。川井は、自身の作品を通して、これらの複雑な感情を表現している。
個展「クローズアップ現代陶芸〜わたしがおぢさんになっても〜」は、川井雄仁というアーティストの過去、現在、そして未来を垣間見ることができる貴重な機会となるだろう。