国産CRISPR-Cas3技術によるユーグレナのゲノム編集成功
株式会社ユーグレナとC4U株式会社が共同で進めていたユーグレナのゲノム編集に関する研究が、2023年5月に大きな成果を上げました。今回の研究では、国産のゲノム編集技術であるCRISPR-Cas3法を用いて、ユーグレナの遺伝子を改良することに成功しました。この技術の応用により、ユーグレナの新たな品種開発が加速し、将来的にはさまざまな商業用途での活用が期待されています。
研究の背景
従来、ユーグレナのゲノム編集にはCRISPR-Cas9やCRISPR-Cpf1といった技術が利用されてきましたが、本技術の特許に関する複雑な状況が、商業化を妨げる要因となっていました。そのため、特許権が明確なCRISPR-Cas3法の使用が望まれていました。C4U社はこの技術に独占ライセンスを持っており、ユーグレナへの適用が期待されました。
研究の内容と成果
本研究では、CRISPR-Cas3法を用いて二つの遺伝子、GSL2とPNOの編集が行われました。GSL2遺伝子に対する編集により、パラミロンという特定の栄養素の合成が抑制される株が作製されました。これにより、ユーグレナに含まれるタンパク質の含有量が増加し、機能性食品としての利用が見込まれます。一方、PNO遺伝子においては、ユーグレナが合成するワックスエステルの生成が抑えられた株も確立されました。
特にGSL2破壊株については、パラミロンの生成を抑えることで、免疫機能を活性化させることができる栄養素の含有率が高まります。これにより、特定の食品用途において、より高い栄養素を持つユーグレナ株の生産が可能になります。また、PNO破壊株では消化できないワックスエステルを生産しないことから、消費者にとっても安心して使用できる食品としての利用が考えられています。
今後の展望
ユーグレナ社は、このCRISPR-Cas3を利用した技術を駆使して、さまざまな品種改良株の開発を進め、早期の実用化を目指しています。また、C4U社との共同研究により、この先進的な技術の産業への応用を一層促進していく方針です。今後の研究開発によって、ユーグレナがより多くの分野で利用されることが期待されます。
まとめ
国産のCRISPR-Cas3技術を利用したゲノム編集は、ユーグレナの可能性を広げる大きな一歩です。これにより、ただの栄養源としてだけでなく、消費者にとって安心かつ高機能な食品の提供が現実味を帯びてきました。今後の研究には、環境負荷の低減や持続可能な開発に寄与する新たなユーグレナ株の誕生が期待されるでしょう。ユーグレナ社の今後の動きに注目です。