軟骨無形成症の新たな治療薬候補、『CDK8阻害剤KY-065』の発見!
岐阜薬科大学の研究チームが主導するプロジェクトで、軟骨無形成症(Achondroplasia)に対する新たな治療薬候補が見つかりました。この研究は、北里大学、京都薬品工業、東京大学との共同(2023年)により進行しており、CDK8阻害剤はこの難治性疾患における有望な創薬ターゲットとして注目されています。
軟骨無形成症は、約20,000人に1人の割合で発症するとされるまれな病気で、FGFR3遺伝子の変異がその原因とされています。この疾患は、手足の短縮や低身長、特徴的な顔つきがあり、成人になっても身長が125〜130 cm程度とされています。患者は日常生活において数々の困難を抱え、合併症のリスクも高まります。現在、ボソリチドという治療薬が承認されていますが、新生児や乳幼児に向けたより安全な治療法の確立が求められています。
研究グループが注目したCDK8は、軟骨無形成症の進行に寄与することが示唆され、KY-065というCDK8阻害剤を用いることで、病態が改善される期待が高まりました。この新薬の使用により、軟骨機能回復と長管骨の伸びが確認されています。
この研究の発表は国際的な学術誌『Biochimica et Biophysica Acta - Molecular Basis of Disease』に掲載され、軟骨無形成症の新しい治療法の可能性に世界中から注目が集まっています。
研究の詳細
研究において、研究者たちはまず軟骨無形成症モデルマウスから得た軟骨細胞を用いて、CDK8の発現状態を詳しく調べました。その結果、ACH軟骨細胞では、CDK8のレベルが遺伝子および蛋白質の両面で増加していることが示され、病態にCDK8が関与していると結論づけられました。
実験を通じて、KY-065がACH軟骨細胞に作用すると、細胞機能が顕著に回復し、縁の染色状態も改善されることが判明しました。また、KY-065によって、STAT1のリン酸化が抑制され、これによって軟骨細胞の機能が促進されることが示唆されました。
更に動物実験でも、KY-065の投与が長管骨の伸びを引き起こし、軟骨の形態も回復することが観察されました。これらの結果により、CDK8は軟骨無形成症の治療の新たなターゲットとして有望であることが示されています。
研究の意義と今後の展望
このCDK8阻害剤KY-065は、特に新生児や乳幼児にとって負担が少ない治療法の選択肢を広げる可能性があります。既存の薬剤との併用により、相加効果も期待され、治療方法のバリエーションが増加することで、患者のQOL(生活の質)の向上が図られるでしょう。
今後、この新薬が実用化されることで、軟骨無形成症だけでなく、他の難治性骨系統疾患に対する革新的な治療法の確立につながることが期待されています。これにより、これまで治療法がないとされてきた病気へのアプローチが実現し、医療分野でのニーズに応える大きな一歩となるでしょう。