慶應義塾大学病院がケタミン治療の効果を検証
慶應義塾大学病院では、うつ病に対する新たな治療法として「ケタミン」を用いた臨床研究が始まりました。この研究は、特に従来の治療に反応しない「治療抵抗性うつ病」の患者に対して行われています。
ケタミン治療の背景
ケタミンは、通常は麻酔薬として使用される薬剤ですが、近年、その低用量での使用がうつ病に対して強力な効果を示すことが海外で報告されています。特に、症状の改善がみられる患者も多く、注目を集めています。日本においても、これを医療に応用する研究が進められているのです。
AMPA-PET検査とは何か?
この研究において重要な役割を果たすのが「AMPA-PET検査」です。脳内の神経細胞が情報を伝達する過程で、「神経伝達物質」とその受け皿となる「受容体」が関与しています。中でも「グルタミン酸」は、学習や記憶に重要な役目を果たしますが、そのグルタミン酸の受容体である「AMPA受容体」の量を直接測定することが、これまでの技術では難しいとされてきました。
しかし最近、横浜市立大学大学院医学研究科の研究チームが、世界初となる生体内で直接AMPA受容体の量を測定できるPET検査用の薬剤を開発しました。この技術の進展により、より深い理解が得られることが期待されています。
ケタミン治療研究の詳細
慶應義塾大学病院の精神・神経科では、ケタミンによる治療がどのように脳に変化をもたらすのかを調査しています。この臨床研究は2022年3月より一般公募が始まり、参加者には治療前後に「AMPA-PET検査」や「TMS-EEG検査」、「MRI検査」といったさまざまな脳画像検査が実施されます。
- - TMS-EEG検査は、経頭蓋磁気刺激を用いて脳波を測定するもので、神経機能を評価するのに役立ちます。
- - MRI検査は、脳の形態や神経に関する情報を得るための検査です。
これらの検査結果を分析することで、ケタミン治療が脳の神経活動に与える影響をより詳細に理解することが目的とされています。
今後の展望
この研究によって、従来の治療法が効果を示さなかった患者に新たな希望が提供されることが期待されています。うつ病は、多くの人々に影響を及ぼす重大な精神疾患であり、より効果的な治療法の確立が求められています。慶應義塾大学病院の取り組みが、多くの患者の改善に繋がることを期待しています。
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