高齢者市場は「デジタルの壁」で大きく変わる
2025年、団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」は、日本社会に大きな影響を与えようとしています。本書は、この問題を高齢化社会の負の側面ではなく、消費という視点から捉え直した一冊です。
著者の原田曜平氏は、マーケティングアナリストとして長年の経験と独自の調査に基づき、現代のシニアの実態を分析。その結果、シニア層に「デジタル」という大きな壁が存在することを明らかにします。
デジタル高齢者は「健康」「お金」「人間関係」で優勢
本書では、デジタルに積極的な「デジタル高齢者」と、そうでない高齢者の生活実態を比較しています。調査によると、デジタル高齢者は、PC保有者全体の平均と比べて、
定期的に接する人の数が約20%多く、1カ月当たりの可処分所得も約20%多いという結果が出ています。つまり、デジタル高齢者は「健康」「お金」「人間関係」の面で、他の高齢者層と比べて優勢であると言えるのです。
「デジタルの壁」は高齢者の生活の質を分ける
著者は、デジタル高齢者の増加は、高齢者市場における新たなビジネスチャンスであると主張します。本書では、80万部突破のベストセラー『80歳の壁』の著者である和田秀樹氏との対談も収録。和田氏も、デジタルの壁が、高齢者の生活の質を大きく左右する問題であると指摘しています。
シニアを8つのペルソナに分類
本書は、シニア層を以下の8つのペルソナに分類し、それぞれへの効果的なアプローチ方法を具体的に解説しています。
ペルソナ① 健康意識が高く、レジャーを楽しむ「引退人生謳歌おじ」
ペルソナ② 社会貢献意欲の高い「ボランティアおじ」
ペルソナ③ ミーハーで美容意識の高い「生涯アクティブウーマン」
ペルソナ④ 介護の合間にメディアで息抜き「老老介護者」
ペルソナ⑤ 孫が唯一の楽しみ LINEで家族とつながる「世代間デジタル」
ペルソナ⑥ 家族に依存し家族消費を行う「家族経由デジタル」
ペルソナ⑦ 低意欲・少コミュニティー「孤独デジタル難民」
ペルソナ⑧ 介護施設で生活が完結する「非自立デジタル難民」
これらのペルソナ別に、商品開発、広告戦略、販売戦略など、具体的なマーケティング施策を提案しています。
これからの時代は「愛される企業・ブランド・製品」を目指せ
2025年問題を機に、高齢者市場は、これまでとは異なる様相を呈しています。本書は、消費意欲の高いデジタル高齢者層をターゲットとした、新たなマーケティング戦略の必要性を訴えています。企業は、本書で示された分析結果と戦略を参考に、高齢者層に愛される企業・ブランド・製品を目指していくべきです。