東北大学と岩崎電気が新たな深紫外発光デバイスの開発に着手
東北大学と岩崎電気は、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」に基づき、強い励起子格子相互作用を利用した高効率の深紫外発光デバイスの研究を開始しました。このプロジェクトでは、人体への低侵襲性が確保され、災害時の水や空気の殺菌・消毒に貢献することを目指しています。
1. 開発の背景
この研究の核心は、窒化ホウ素(BN)薄膜を用いた新しい発光デバイスの設計にあります。これまで、「間接遷移型半導体は発光しない」という常識が解かれる新たな可能性が開かれています。研究グループは、これまで20年以上にわたり、AlGaN LEDの短波長化に関する基礎研究を進めており、発光効率に関する多くの成果を挙げてきました。
彼らの研究から、発光効率の改善には、非発光再結合中心の濃度を低減させることが必要であるとする考え方が明らかになりました。BNは、その特性から発光波長に揺らぎが無く、優れた発光性能を持つことが確認されています。特に、215nmの波長域においては、従来のAlGaNよりも優れた性能を示すことが期待されています。
2. 研究の目的
本研究の主な目標は、単純な発光デバイスの枠を超え、深紫外発光デバイスの基盤技術を確立することです。具体的には、高品質なsp²-BN薄膜の作成、発光のメカニズムの理解、そして小型で高効率の電子線励起源の開発が含まれます。これにより、従来の発光デバイスでは実現できなかった新たな光源の開発が目指されています。
研究の主なステップ
- - 気相エピタキシャル結晶成長:高発光効率を持つsp²-BNを利用し、その薄膜を成長させる技術。
- - 発光ダイナミクスの解析:バンド端励起子の発光特性やその温度依存性の理解。発光寿命や空間分布の解析も行います。
- - 電子線励起源の開発:小型・高効率な電子線励起源を使用して、深紫外発光デバイスの実用化を追求します。
3. 期待される効果
この研究が成功すれば、医療、食品、防災などの幅広い分野での応用が見込まれます。特にウイルスの不活化や殺菌が安全に実現できる光源としての機能が注目されています。深紫外光による迅速な殺菌は、災害時や緊急時の健康確保にも寄与するでしょう。
社会的意義
新たな深紫外光源は、環境への影響が少なく、持続可能な形での使用が期待されます。さらに、技術としての基盤が固まれば、具体的な製品として市場に登場する可能性も大いにあります。これにより、技術革新がもたらす新たな価値が、私たちの生活の質を向上させることが期待されます。
4. 結論
今後の研究成果が、この深紫外発光デバイスの実用化にどのように寄与するのか、そして私たちの生活をどのように変えるのか、期待が高まります。岩崎電気と東北大学の共同研究が新たな技術革新を切り拓く可能性に、目が離せません。