湿度変動電池の新展開
2025-01-22 14:06:32

湿度変動電池が実現する新たな環境発電技術の可能性

湿度変動電池が実現する新たな環境発電技術の可能性



日本の国立研究開発法人である産業技術総合研究所の研究チームが、湿度変動電池の性能を大幅に向上させ、長期間にわたってワイヤレスセンサーを駆動させることに世界で初めて成功しました。この湿度変動電池は、昼夜の湿度変化を利用して発電を行うもので、特に暗所でも使用できるクリーン電源としての期待が寄せられています。

湿度変動電池の概要


湿度変動電池は、周囲の湿度変化を利用して発電するデバイスです。具体的には、高い吸湿性を持つ電解液と電極が収納された二つの槽があり、その間を陽イオン交換膜で仕切っています。湿度が変化することで、開放槽内の電解液の濃度が変わり、濃度差が発生し電圧が生まれます。これまではポリマー系膜を使用していましたが、今回は水分を透過させないセラミック固体電解質膜を活用することで、自己放電を完全になくし、高出力化に成功しました。

成果の詳細と実用性


今回の開発により、最大出力が2.5 mWに達し、平均出力も17.5 µWを確保。この出力は、小型のワイヤレスセンサーなどの省電力な電子回路を駆動させるには十分な数値です。特に、湿度変動電池を電源とするワイヤレスセンサーが4カ月以上も運用可能となり、その結果として、メンテナンスフリーのセンサー利用が実現可能になりました。

この技術の革新により、インフラの監視や農業など、さまざまな分野でのIoT技術活用が加速することが期待されます。特に太陽電池が利用できないような暗所での電源供給が可能になっており、今後の社会における持続可能なエネルギー供給に向けた重要な一歩となるでしょう。

理論的背景と発展の可能性


また、研究者たちは湿度変化を利用した発電の熱力学理論を新たに導出しました。これにより、湿度発電サイクルにおける最大エネルギーや最大発電効率が明確になり、これまで不明だった理論的な根拠が得られました。特に、準静的サイクルにおいては発電効率が100%に達することが理論的に明らかにされています。この理論をもとに、さらなる高性能化が期待されます。

今後の展開


今後は、開発した湿度変動電池をさらに実用化するため、耐久性を高め、寿命を10~20年以上に延ばす研究開発が進められます。湿度変動電池のより一層の高出力化が実現すれば、さまざまな分野での応用が進むことが予想されます。

参考文献


この研究の成果は、2025年1月21日に「Advanced Energy & Sustainability Research」に掲載される予定です。また、正式な発表は2025年1月29日から31日まで東京ビッグサイトで開催される展示会「MEMSセンス部門で行われます。

この新たな湿度変動電池技術が、持続可能な未来にどれほど貢献するのか、引き続き注目していきたいと思います。


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