近年、精神障害として着目されているパニック症は、強い不安感と共に発作が起きることから日常生活に大きな影響を与えます。在宅での生活が求められる中、その治療法として期待されるのがオンラインによる認知行動療法(CBT)です。千葉大学の研究チームは、薬物療法を受けても症状が改善しないパニック症患者に対し、オンラインでのCBTの効果を確認する研究を行いました。
研究の背景
パニック症は、動悸や息切れ、めまいなどの身体的症状を伴い、強い不安に悩まされる精神的疾患です。欧米では認知行動療法が広く実施されてきましたが、日本では専門家が不足しており、主に薬物療法が行われてきました。しかし、薬物による治療では効果が出ない患者が多く、オンラインでの認知行動療法が新たな可能性として注目されています。
研究の実施
今回の研究では、薬物療法の効果が不十分な30名のパニック症患者を対象としました。参加者は、通常の治療に加え、オンラインでのCBTを受ける群(介入群)と、通常の治療のみを行う群(対照群)に分けられました。介入群には、セラピストが週1回の頻度でオンラインセッションを行い、パニック症状への理解を深め、対処スキルを学びました。
結果の概要
研究の結果、介入群では症状評価のスコアが著しく低下しました。実際、PDSS評価で見ると、介入群は平均12.8点から5.4点に改善し、80%の患者が症状の改善を報告しました。
今後の展望
この成果により、薬物療法では改善が見込めない患者にも、新たな選択肢としてオンライン認知行動療法が示されました。さらに、この治療法は患者が自宅で手軽に受けられるため、外出の難しい方々にとっても利用しやすく、有益です。将来的には、日本の多くの医療機関でこの治療法が利用できる環境を整えていくことが期待されています。
結論
本研究は、薬物療法での治療が十分でないパニック症患者に対して、オンラインによる個別CBTが効果的であることを示すものであり、精神的疾患治療の新たな一歩を切り開くものです。多くの患者が安心して治療を受けられる環境の整備が待たれます。