現代の奴隷問題
2022-12-01 12:00:01

現代の奴隷問題を考える:カタールの事例とビジネス界の役割

現代の奴隷問題を考える



近年、国際的に注目を集めている「現代奴隷」問題は、特にビジネス界においても重要な課題とされています。この状況は、国際労働機関(ILO)のデータによると、全世界で約5,000万人が影響を受けており、さらにはその関連産業の規模が数十兆円に達するとも言われています。最近のニュースでは、カタールで開催されたサッカー・ワールドカップに関連する建設現場での人権侵害が報じられ、私たちはこの問題がどれほど身近で深刻であるかを改めて認識する必要があります。

書籍『現代の奴隷』について



この問題を広く理解するための一助となるのが、モニーク・ヴィラ氏による著書『現代の奴隷――身近にひそむ人身取引ビジネスの真実と私たちにできること』です本書は現代奴隷の実態を詳細に語り、特に被害者となった3人の「サバイバー」の体験を通じて、この問題のリアルな側面を浮き彫りにしています。

著者は、強制労働に従事させられたカタールの男性、南米から日本に売られた女性、さらには恋人によって被害に遭った米国人女性、彼らの目を通して、どのようにして普通の人々が奴隷状態に陥ってしまうのかを描き出しています。これらの証言は衝撃的であり、多くの人々にとって他人事ではないかもしれません。

問題解決に向けたアクション



本書のもう一つの重要な点は、現代奴隷問題に対する具体的な解決策が提示されていることです。個人ができること、企業が取り組むこと、メディアが担う役割など、あらゆるレベルでのアクションが必要です。消費者としての行動を意識すること、教育機関が取り組むアプローチ、さらには企業間の連携やNGOへの支援など、多様な視点からのアプローチが求められています。

ESG経営とビジネス界の未来



ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、企業は現代奴隷の問題に対処することが求められています。特に、サッカー・ワールドカップの開催国であるカタールにおける実態や、ウイグル綿の生産過程に潜む強制労働の疑いなど、ビジネスのサプライチェーンに直結する事例が増加しています。これらの社会的課題に対して企業がどのように応えるかが、今後のビジネス社会において非常に重要になってきます。

日本における取り組み



翻訳者であり、現代奴隷問題に取り組む非営利団体「ノット・フォー・セール・ジャパン」の代表でもある山岡万里子氏は、巻末の「訳者あとがき」で日本の現代奴隷問題についても詳しく解説しています。国内外での取り組みを強化するためには、メディアや一般市民がこの問題に対する理解を深め、行動することが求められます。

結論



現代奴隷問題は、決して他人事ではなく、身近な問題です。誰もが何らかの形でこの問題に関与している可能性があるため、一人ひとりがこの問題に対する意識を高め、解決に向けたアクションを起こすことが重要です。本書『現代の奴隷』は、その第一歩となる一冊です。

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