難治性疾患TTR-FAP治療の転換期:ホリスティックケア提言が示す新たな展望

難治性疾患TTR-FAP治療の転換期:ホリスティックケア提言が示す新たな展望



近年、医療現場では、単なる病気の治療にとどまらず、患者さんの生活の質(QOL)向上を重視する「ホリスティックケア」への関心が高まっています。この考え方は、難治性疾患の治療において特に重要視されており、患者の身体的、精神的、社会的側面を包括的にケアすることで、より良い生活を送れるよう支援するものです。

この度、RNAi治療薬のリーディングカンパニーであるAlnylam Pharmaceuticals社は、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)という希少遺伝性疾患に対する画期的な提言を発表しました。TTR-FAPは、進行性の神経障害や心疾患を引き起こす重篤な疾患であり、患者さんの生活に多大な影響を与えます。

患者と医療従事者の協働による包括的ケア

今回の提言は、患者支援者と医療従事者からなる国際委員会によって策定され、BMJ Open誌に掲載されました。この提言の大きな特徴は、患者さんのニーズを最優先に考え、早期診断、治療開始、多職種連携による包括的なケアを推奨している点です。

具体的には、以下の7つの分野に焦点を当てた提言がなされています。

1. 早期診断と治療へのアクセス
2. 疾患のモニタリングとケアの組織化
3. 身体的・精神的健康の維持
4. 家族を第一に考えたケアと介護者の支援
5. 患者と医療従事者の意見交換と意思決定の共有
6. 地域社会における支援へのアクセス
7. 精神的支援とソーシャルネットワーキング

これらの提言は、単に薬物療法を行うだけでなく、患者さんの生活全般を支えるための多角的なアプローチの必要性を強調しています。例えば、家族への支援、心理的ケア、社会参加支援など、患者さんのQOL向上に繋がる様々なサポートが不可欠であるとされています。

日本の専門家の見解

信州大学医学部関島良樹教授は、日本におけるTTR-FAP患者の現状と、この提言の重要性についてコメントを発表しました。教授は、TTR-FAPの複雑性と予後不良性を指摘し、今回の提言が患者のQOL向上に大きく貢献すると述べています。また、症状の治療だけでなく、身体的、心理的、社会的、精神的な面での包括的な支援が必要であると強調しました。

Alnylam社の取り組み

Alnylam社は、TTR-FAP治療薬の開発・提供だけでなく、患者支援活動にも積極的に取り組んでいます。疾患情報サイトの開設や患者団体との連携などを通じて、患者さんやその家族への情報提供やサポート体制の構築に力を入れています。今回の提言発表も、そうした活動の一環と言えるでしょう。

今後の展望

この提言は、TTR-FAP治療における大きな転換点となる可能性を秘めています。患者中心の包括的なケアを実現するためには、医療機関、患者団体、製薬企業など、様々な関係者の協力が不可欠です。Alnylam社は、日本においても医療従事者や患者支援者と連携し、ホリスティックケアの推進に尽力していくとしています。

この提言は、TTR-FAPだけでなく、他の難治性疾患の治療においても重要な示唆を与えてくれます。患者さんの個々のニーズに応じた、より人間味あふれる医療を目指していくことが、今後の医療の大きな課題と言えるでしょう。

参考文献

1. Obici L, Callaghan R, Ablett J, et al. Consensus Recommendations on Holistic Care in Hereditary ATTR Amyloidosis: An International Delphi Survey of Patient Advocates and Multidisciplinary Healthcare Professionals. BMJ Open 2023;0:e073130. doi:10.1136/bmjopen-2023-073130

会社情報

会社名
Alnylam Japan株式会社
住所
東京都千代田区丸の内1-11-1 パシフィックセンチュリープレイス丸の内11階
電話番号
03-6629-6200

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