幻の再生医療、脂肪組織由来幹細胞治療(ADSC治療)
公益財団法人がん集学的治療研究財団が、自らの研究を進め、再生医療に対する取り組みを強化しています。この新たな取り組みの中心には、脂肪組織由来幹細胞治療(ADSC治療)があります。この治療法は、特にアルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった、これまで治療が困難とされてきた疾患に対して、画期的な効果を示しています。
再生医療の選択肢
これまで再生医療というと、京都大学のiPS細胞が有名でしたが、ADSC治療は自己の脂肪組織から得られる幹細胞を利用するため、拒絶反応のリスクが非常に低いとされています。この方法は、患者が自分の体から採取した細胞で治療を受けるため、患者にやさしい治療法と評価されています。
具体的には、この治療法では、患者自身の脂肪組織から幹細胞を取り出し、一定の条件下で培養した後、約1カ月ごとに点滴として投与します。この過程を経ることで、ADSCは体内でさまざまな修復メカニズムを働かせ、治療効果を発揮します。
認知症治療の顕著な成果
最新の研究結果によると、アルツハイマー型認知症の患者14人に対するADSC治療では、全例で認知機能の改善が見られました。特に、進行度が中等度の患者では、75%の患者で健康な状態に近い改善が確認されており、この治療法が従来の薬物治療に比べて優れた効果を示すことが明らかになっています。薬物治療では進行を遅らせることができても、症状の改善が期待できないのに対し、ADSC治療では実際に改善が見られています。
ALS患者の回復の可能性
ALSという難病は、進行すると生命に関わる状況まで進むことがある病気ですが、ADSC治療の結果、54%の患者において症状改善の報告がされています。治療を受けたある患者は、治療から10年後に職場復帰するまでに回復し、現在も日常生活を送っているという事例もあります。この成果は、ADSCが脳内の有害な蛋白質を分解する酵素を分泌することに起因していると言われています。
パーキンソン病とADSC治療
さらにパーキンソン病の患者にも類似の治療効果が報告されており、治療を受けた患者のうち89%において、症状の改善が見られたというデータがあります。このことから、ADSC治療は神経難病全般に対する有望な治療法となりつつあります。
他の疾患にも適用の可能性
ADSC治療の効果は、認知症や神経難病にとどまらず、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や動脈硬化症、骨粗鬆症に対しても期待されています。研究が進むことで、さらなる証拠が得られ、多くの疾患に対する新たな治療効果が示されることが期待されています。
まとめ
脂肪組織由来幹細胞治療(ADSC治療)は、新たな治療の選択肢としての可能性を秘めており、現在進行中の研究が将来的に多くの患者に恩恵をもたらすことが期待されています。今後の研究の進展に注目です。