新たな産業機械部品の形状評価技術
産業機械部品においてマイクロメートルオーダーの精度が求められる場面は数多くあります。特に、発電機やエンジンに不可欠なタービンブレードなど、形状のわずかな不具合が発電効率やトラブルを引き起こす可能性があります。そのため、こうした部品の形状は、接触式三次元座標測定機(CMM)を用いて精密に評価しなければなりません。
問題点と新技術の開発
従来の接触式CMMを使用して、数ミリメートル以下の曲率半径を持つ部品を測定する際、プローブ球の半径による測定誤差が発生することがありました。この誤差は、数マイクロメートルに及ぶこともあり、形状評価の信頼性を損なう要因になっていました。
国立研究開発法人産業技術総合研究所の研究チームは、この問題を解決するために、モルフォロジカル処理という新しい手法を導入しました。この技術は、画像処理におけるノイズ除去や表面粗さ測定で用いられる方法で、プローブ球の半径を補正する際の誤差を低減することができます。具体的には、プローブ球を真円と仮定し、測定物の形状を計算することによって、測定のばらつきをサブマイクロメートルオーダーまで低減しました。
タービンブレードへの適用
研究チームは、この新技術をタービンブレードの断面形状測定に応用しました。結果、測定結果のばらつきが大幅に改善され、精密測定に対する信頼性が向上したことが確認されました。これにより、産業機械部品の加工精度や品質、安全性に対する期待が高まっています。
形状評価の重要性
産業機械部品の形状評価は、その性能を左右する重要なプロセスです。特に、タービンブレードのような部品は、気体の流れや効率に大きな影響を与えます。設計図からのズレが生じると、タービンの発電効率が低下したり、ブレードが破損するリスクが高まります。したがって、正確な形状評価は安全性や性能を担保するためには欠かせません。
今後の展開
この新技術は、タービンブレードだけでなく、他の産業機械部品の形状評価にも適用可能です。今後は、プローブ球の実際の形状を考慮に入れることで、さらなる測定精度の向上が期待されています。これにより、産業機械における効率的な品質保証が実現することでしょう。
研究成果は2024年9月11日に「Precision Engineering」に掲載されました。今後の産業機械部品の製造と評価における新たな道を切り開くこの技術に、注目が集まります。