2025年度後期放送のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」の主人公モデルである小泉セツ。そのセツと後の小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の出会いから『怪談』が生まれるまでを描いた時代小説『ヘルンとセツ』(2022年8月30日/NHK出版刊)が、ドラマ放送決定を受け増刷されることが決定しました。
明治時代、松江藩では武士たちは身分と家禄を失い、困窮する者が続出しました。小泉セツも幼い頃は上士の娘として大切に育てられていましたが、住んでいた家を追い出され、働く意欲を失った父の代わりに、縫物や機織りで生計を立てていました。
そんな中、日本に憧れ、来日したものの、原稿が採用されず、学校教師となったラフカディオ・ハーンが松江の尋常中学校に赴任します。縁あってセツはハーンの身の回りの世話をすることに。セツが語る民話にハーンは強い興味を示し、何度も繰り返し話すように頼むようになり、二人の共同作業が始まりました。
『ヘルンとセツ』は、松江の史跡や名所を舞台に、1890年に松江の尋常中学校教師として赴任したラフカディオ・ハーン(後の小泉八雲)と、松江藩上士の家に生まれた小泉セツの共同作業を通して、異文化混交から芸術が生まれるまでの物語をドラマチックに描いた作品です。
セツが語る民話に魅了されたハーンは、セツの語り口や日本の文化に深い感銘を受け、やがて『怪談』という名作を生み出すことになるのです。二人の出会いは、単なる世話係と教師の関係を超え、互いに刺激を与え合い、共に成長していく、まさに運命的な出会いと言えるでしょう。
『ヘルンとセツ』は、2025年の秋から放送されるNHK連続テレビ小説「ばけばけ」の放送決定により、再び注目を集めています。「放送前に小泉八雲・セツ夫婦について知りたい!」「夫婦の物語を読みたい!」という多くの声が寄せられ、増刷が決定しました。
著者の田渕久美子さんは、「武士の娘の矜持をもったセツとアイルランドからアメリカを経て日本に渡ってきたヘルン(ラフカディオ・ハーン)、二人の奇跡の出会いは、若いころから温めてきたテーマでした。増刷が決まり、さらに多くの読者に二人の物語を読んでいただけるのは嬉しいです。」とコメントしています。
『ヘルンとセツ』は、二人の出会いと『怪談』誕生の物語だけでなく、明治時代の社会状況や、異文化交流の面白さ、そして二人の心の交流を描いた、読み応えのある作品です。朝ドラ「ばけばけ」の放送を前に、ぜひ手に取ってみてください。