近年、スポーツ分野におけるICTの導入が進んでおり、特に児童の運動スキル向上に大きな期待が寄せられています。九州工業大学の山田雅之教授が中心となった研究グループは、児童の鉄棒スキル、具体的には前回りや逆上がりの習得を支援するために、スポーツテック《HDMi》を活用した実験を行いました。この研究の成果は、国際学術論文ジャーナル「Journal of Digital Life」に掲載されており、スポーツテックがもたらす効果に注目が集まっています。
本研究では、実施された実験に参加したのは二人の児童、AとBです。研究の開始時点では、児童Aは前回りも逆上がりもできず、児童Bは前回りを出来る状態でした。彼らの練習過程は、振り返り、事前のインタビュー、トレーニング、実技テスト、事後インタビューといった一連の流れで行われ、HDMiを用いてそれぞれの発話や動作を可視化しました。
実験を通じて驚くべき成果が得られました。リーダー格の児童Aは、幾度かの偶発的な成功を経て、20回目の練習にして逆上がりを安定して成功させることができるようになったのです。この成果は、単に身体の動作だけでなく、認知面での熟達も重要であることを示唆する結果となりました。Aが成功を収めた過程では、時には偶然の成功が積み重なることで、その後の安定した達成につながったと考えられます。
また、興味深い点として、AとBが互いの練習動画を視聴したり、協力して練習を行ったことが挙げられます。この過程で新しい視点が発見され、協調学習が身体動作の練習にも適用可能であることが示されました。共同で行う学習の効果がこの実験でも確認されたわけです。
さらに、研究チームは、児童との対話が滞った場合に動画視聴がどのように効果を担うか、または、その主体性を妨げる要因になるのかについて今後の課題として位置づけています。児童の運動習慣を支援し、より効果的な練習方法を見出すためには、さらなる検討が必要です。
このように、九州工業大学の研究は、スポーツテックの活用が児童の運動スキルの獲得過程において新たな可能性をもたらすことを示しています。今後もデジタル技術の進展が、スポーツ教育の現場においてどのように応用されていくかが注視されるでしょう。
さらに詳しい内容については、関連論文や記事を参照して理解を深めていただければと思います。興味がある方は「Journal of Digital Life」をぜひご覧ください。