ispaceとJAXAによる月着陸船の新たな推進システム
2023年、株式会社ispaceが国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と新たな契約を結びました。この契約は、月着陸船の推進薬供給系に電動ポンプを活用する検討をするものです。これは、宇宙探索における技術革新を意味し、未来の月面探査に向けた大きな一歩です。
従来の推進系の問題点
これまで、多くの探査機や人工衛星では、高圧のタンクから推進薬を供給する方式が主流でした。しかし、この方法にはいくつかの課題があり、特にタンクの重量が問題です。タンクの肉厚化が必要となり、それが結果的に宇宙機の全体重量を増加させてしまいます。特に、ispaceが開発中のシステムである「シリーズ3ランダー」のように大型宇宙機では、この問題が顕著になります。
新たな契約の内容
ispaceとJAXAの提携によって、本契約に基づく最適化研究がスタートします。この研究では、電動ポンプ式の推進系を用いることで、航行中に使用する電力を最小限に抑えながら、全体のシステムを軽量化することを目指しています。また、最適化結果は月着陸船の機能を向上させるための評価に役立てられます。
ispaceのミッション
ispaceはこれまでに独自に開発した月着陸船を使用したミッション1やミッション2を成功させ、設計技術の実証を行ってきました。これにより、実際に月周回までの輸送能力や、ランダーの姿勢制御、誘導制御機能などを確認しました。そして、今回の契約によって、JAXAが長年進めてきた電動ポンプ技術の応用が広がることが期待されます。
代表取締役のコメント
ispaceの代表取締役CEOである袴田武史氏は、「JAXAとの契約が月着陸船の推進系の最適化に繋がることに嬉しく思います。これまでの月ミッションで得た経験が新たな開発に生かされ、システム効率の向上に寄与することを期待しています」と語っています。これは、両社の協力が宇宙開発の未来をどう変えるか示唆しています。
ispaceについて
ispaceは「Expand our planet. Expand our future.」をビジョンに掲げ、月面資源開発を行う宇宙スタートアップ企業です。日本、ルクセンブルク、アメリカの三拠点で約300名のスタッフが在籍し、2010年に設立されました。特に注目すべきは、Google Lunar XPRIZEレースの最終選考に残ったチーム「HAKUTO」を運営していた点で、今後の月面ビジネスの可能性を示しています。
2022年には、自社初となるミッション1のランダーをSpaceXのFalcon 9を使って打ち上げました。現在は、2025年にミッション2、2027年にミッション3の打ち上げを計画中であり、最終的には月面でのビジネス環境を整えることを目指しています。2028年にはシリーズ3ランダーを用いたミッション4の打ち上げも予定しており、日本の宇宙開発への期待がますます高まっています。