介護予防を地域づくりに織り込む陸前高田市の取り組みとは
2026年5月14日、陸前高田市の認定NPO法人SETの理事長、三井俊介さんが都市型看護介護医療等連携研究会に参加し、陸前高田市での15年にわたる実践について発表しました。これは、東京・名古屋・大阪の医療や福祉の専門家たちに向けた報告であり、特に陸前高田市での「関係性のデザイン」が大都市との違いを生む可能性を示すものでした。
この報告を受けて、東京都健康長寿医療センターの藤原佳典氏は、「介護予防でまちづくりをするのではなく、まちづくりの中に介護予防がある」という逆転の発想を再確認しました。これは、人口が減少し続ける地域が、どのように既存の関係性を活かして高齢化に対応しているかを探る重要な鍵となる話題です。
小が大を動かした——逆転の発想の表れ
陸前高田市では、人口減少が必ずしも関係性の消失を意味しないことが示されています。「関係があるから、人口減少にも耐えられる」という逆転の発想が、都市で高齢者ケアに対処する専門家たちに新しい視点を提供しました。この考え方が、本研究会のテーマである「地域密着型サービス」における多職種協働のあり方に影響を与えるのです。
三井が披露したのは、ある若者が地域住民とつながりを築くことを通じて形成された陸前高田のモデルでした。具体的には、岩手県の中高生約1,300人へのキャリア教育、大学生約1,500人による滞在プログラム、修学旅行生約17,000人の受け入れ、年間約3,000名の地域住民との交流事業といった活動が紹介され、いずれも「一度きりで終わらない関係性」を大切にしてきたことが強調されました。
関係性の深化が引き起こす新たな可能性
研究会内での質疑応答では、SETと介護予防または総合事業との連携の可能性が話題に上がりました。藤原氏は特に、自由度が高い総合事業が十分に活用されていない現状を述べ、SETの交流事業を介護予防事業として利用することができると指摘しました。また、移動支援が訪問型サービスへと発展する可能性も併せて言及されました。
一方、三井は、SETの窓口が商工観光部門の交流定住係であることを説明し、福祉担当部署との接点がさらに深まることを期待しました。支援者と支援される側の単方向的な関係から脱却し、若者と地域住民が相互に影響を与え合うような関係性が、制度の行き届かない日常における安心感をもたらす可能性があることを示しました。
あなたの地域での展開に向けて
現在、SETは複数の自治体でこのモデルの展開を目指しており、他の団体も同様の取り組みができるようにその方法を体系化しています。2026年には、15年間の経験と理念をまとめた書籍の出版も予定しています。
「まちづくりの中に介護予防がある」とは、陸前高田市に限らず、都市や地方で人々がつながりお互いを気にかけ合う関係性をどう築くかという普遍的な問題です。この問いは、あなたの地域でも既に答えを見つけることができるかもしれません。
興味をもった方はぜひ、陸前高田市を訪れてみてください。この地域で培われた関係性が、地域包括ケアや高齢者支援にどのように影響を与えうるか、その進展はここから静かに始まっています。
SETについて
認定NPO法人SETは、「一人ひとりの"やりたい"を"できた"に変え、日本の未来にGoodなChangeを起こす」をミッションに掲げています。2011年に発足して以降、主に岩手県において若者と地域住民が共に学ぶ仕組みを構築してきました。修学旅行民泊や大学生・社会人向けプログラムを通じて、持続的な地域づくりを進めています。過去に内閣総理大臣賞を2度受賞した他、多くの業績を上げています。