大阪工業大学の新たな研究成果
大阪工業大学の応用化学科に所属する平原将也准教授らの研究グループが、光と酸化還元に反応する珍しい金属錯体を明らかにしました。この新発見は、さまざまな刺激に応じて構造が変化する分子スイッチとしての特性を持ち、触媒や材料、医薬品といった幅広い用途への応用が期待されています。
分子スイッチとは?
外部からの刺激(光、温度、化学物質など)により、分子の構造や性質が逆転可能に変化するものを「分子スイッチ」と呼びます。例えば、一般的に知られるアゾベンゼンは、紫外光や熱によってトランス体とシス体の間で構造を変えます。これにより、物理的特性が変わることから、さまざまな場面で利用されています。
本研究の核心
本研究では、ルテニウムを中心金属とした金属錯体に焦点を当てました。特に注目すべきは、カルボキシル基を持つ「錯体1」です。この錯体に可視光を照射すると、分子内の水素結合を持つ「錯体2」へと構造が変化します。さらに「錯体2」は、酸化還元反応を受けることで、元の「錯体1」に戻る特性を持ち、これを実験とシミュレーションにより明らかにしました。
触媒活性の驚くべき制御
新たに合成されたこの金属錯体は、光と酸化還元に反応することでそれぞれの特性を示す分子スイッチとして機能します。この特性により、錯体の触媒活性を外部刺激によって自在に制御可能です。今後の研究によって、外部からの刺激に応じた触媒、材料、医薬品などの開発が期待されており、実用化も視野に入っています。
研究成果の公表
本研究成果は、2025年8月23日(現地時間)にドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載されました。また、この研究は日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B)によって支援されています。
今後の展望
この最新の発見は、化学分野における新たなブレークスルーを意味しています。光や化学刺激により触媒活性を自在に制御できる分子により、今後新しい材料や薬剤の開発が進むことでしょう。研究グループは、この新しい金属錯体の特性をさらに探求し、実用化に向けた道筋を模索しています。
興味深いのは、科学の進歩がどれほど私たちの生活に影響を与えるかという点です。この技術が実現した暁には、私たちの周囲で使用される化学物質のあり方が大きく変わる可能性があるのです。今後の展開、さらなる研究の進展が待たれます。