医学生が学ぶ地域医療の現実
杏林大学医学部は、地域医療の重要性を理解し、未来の医師を育成するための取り組みの一環として、医学部生によるへき地医療の見学体験を実施しました。今年で10回目となるこの活動は、南会津町の舘岩愛輝診療所において、8月9日と10日の2日間行われました。
南会津町は福島県の西南部に位置し、豊かな自然に囲まれた地域ですが、人口は約1.35万人で高齢化率は42%を超えるという現実があります。山田仁所長が運営する舘岩愛輝診療所には、常勤医師は彼一人で、他の診療所へ行くには30~40分の移動が必要です。このような状況の中で、地域医療は非常に重要な役割を果たしています。
今回の見学には、統合医療研究部に所属する学生10人が参加しました。学生たちは、山田所長の指導のもとで外来患者の診察体験や在宅診療の見学を行い、実際のへき地医療の現状を肌で感じました。活動の責任者となった学生は、「山田先生からは、医師に必要な知識の他に、患者さんとのコミュニケーションや信頼関係を築くことの重要性を学び、大変貴重な体験となった」と振り返ります。
この見学は、学生たちに地域医療の実態を理解させるだけでなく、将来の医療人としての志を高める契機となっています。過去の参加者の中には、地域医療の現場で活躍する医師として成長した者もおり、彼らは内科や小児科、精神科など多岐にわたって診療に貢献しています。
彼らの学びの中には、医療過疎地域での患者の受け皿となる地方診療所の重要性に気づかされる体験も含まれています。応急処置の必要な緊急疾患への対処や、地域の健康を守るための重要な役割を果たしていることを実感しています。
課題と展望
へき地医療を見学する中で、医学生たちは地域の患者が直面する多くの課題を目にしました。山間部に住む高齢者が通院する際の交通手段や、急病の際のアクセスの難しさは深刻な問題です。見学を通して、学生たちは医療の提供が如何に地域の生活に直結しているかを理解し、今後の活動への意欲を高めています。
このような医療現場の体験は、学生たちにとって将来的な医師としての倫理観や使命感を養う貴重な機会となっています。地域医療の担い手としての視点を持つことが、彼らの職業的な成長につながることが期待されています。杏林大学医学部は、これからも地域医療の大切さを学ぶ場を提供し続けることで、学生たちがより良い医師へと成長する手助けをしていきます。