保護者と教員が共に考える未来の運動会
2025年11月14日、東京都目黒区にある目黒区立油面小学校で、保護者と教員のための『インクルーシブデザインワークショップ』が実施されました。このワークショップは、インクルーシブデザインスタジオCULUMU(運営:株式会社STYZ)の協力のもと、目黒区教育委員会が指定する家庭教育講座の一環として行われました。この取り組みは、執筆時点では目黒区の公立小学校で初めてCULUMUのプログラムが採用された事例となっています。
目指すのは「誰一人取り残さない」学校づくり
このワークショップは、学校経営の理念「誰一人取り残さない」というテーマに基づき、多様な背景を持つ人々が共に楽しめる運動会を構想するものです。保護者と教員はそれぞれの立場を超えて多様性への理解を深めるために新たな道を模索しました。参加者は、子育てにおける課題や価値観の相違を理解し合う機会を得ることを目指しています。特に、最近の子育てのテーマはスマートフォンの使用や性教育など多岐にわたっているため、保護者間での意見の対立や情報共有が必要となる時代に突入しています。
様々な視点でのアプローチ
当日は、校長を含む保護者19名が参加し、デザイン思考のプロセスに基づくワークショップが行われました。初めに行われたアイスブレイクでは、「会話禁止」というルールの元、各参加者には秘密のルールが与えられ、レゴブロックで家を作るという協力タスクに挑みました。この過程で、参加者はお互いの前提や価値観の違いによる摩擦を体感し、他者の背景を理解しようとする重要性を学びました。
次に、CULUMUが提供する『インクルーシブペルソナカード』を使用し、具体的な人物像を設定して運動会における課題を議論しました。具体的には、車いす利用者や日本語に不安のある保護者、聴覚過敏のある児童など、当事者視点で考えた意見交換を通じて、潜在的なニーズを明らかにしました。
「競争」から「共生」へ
参加者同士の発表では、「運動会は勝敗だけではない」という新たな視点に基づくユニークなアイデアが飛び交いました。休憩スペースをエンターテインメントとして活用する提案など、多様性を包含する新たなアクションプランが生まれました。参加者全員で『誰一人取り残さない』ための具体的なアイデアを共に創り上げる機会となり、議論は活発に進みました。
ワークショップの成果
目黒区立油面小学校の校長、衣非まさ子先生は、このワークショップが学校運営における基づくべき原点を再認識する貴重な機会であったと語りました。特に、「競うことだけが運動会の意義ではない」との新しい視点が得られたことから、今後も子どもたちの意見を大切にしながら、全ての人に優しい教育環境の実現に取り組むことを表明しました。
参加した保護者たちも、それぞれの立場から多様性についての理解を深めたと好評でした。参加者は、「社会全体を良くするためには多様な視点が必要」といった意見や、「共存する方法を学ぶ価値を実感した」との感想を述べ、意識の変化を感じていました。
今後の展望
CULUMUは、これまでに多くの企業に対してインクルーシブデザインを通じたソリューションを提供してきました。今回の事例は、この手法が製品の開発のみならず、教育現場やコミュニティ形成においても非常に効果的であることを示しました。これからも、CULUMUは教育機関や企業に向けたインクルーシブデザインワークショップを拡大し、より多くの人々が共に学びあい、成長できる機会を提供していくことを目指します。