魚粉ショックからの脱却
近年、日本の養殖業が直面している最大の課題は、原料魚粉の価格高騰、いわゆる「魚粉ショック」です。この事態は、気候変動や資源保護の観点から漁獲制限が強化されていることや、円安の影響が加わり深刻さを増しています。このままでは多くの養殖業者が経営危機に直面する可能性が高い状況です。
そこで、バイオ科学株式会社は、長年のパートナーであるインドのSeidecosaa Biotech Private Limited(SB社)と連携し、カイコの蛹を活用した代替タンパク飼料事業に着手しました。この取り組みが、持続可能な養殖業の実現に貢献することが期待されています。
魚粉ショックとカイコの可能性
養殖魚に使用される主な飼料である魚粉は、カタクチイワシをはじめとする魚類から製造されています。しかし、近年その供給は減少し、非常に高価になっています。これに対抗するため、代替成分としてカイコに注目が集まっています。
カイコは、無農薬の桑を食べて育ち、環境にやさしい資源です。さらに、高タンパクであり魚の成長を促進するオメガ系脂肪酸も豊富に含んでいます。実際、インドでは年間約12万トンのカイコの蛹が生産されていますが、多くは未利用のまま廃棄されているのが現状です。この未利用資源を有効活用することが求められています。
Seidecosaa Biotechとの提携
SB社は、インドのシルク産業において約30年の実績を持つ企業で、独自の無溶媒抽出技術を用いて高品質な飼料用パウダーやオイルを生産しています。バイオ科学株式会社は、SB社への出資を通じて持株比率を25%超に引き上げ、日本の品質基準とインドの生産能力を組み合わせた新たな供給体制を構築する予定です。
社外取締役も派遣し、両国の協力体制を一層強化します。このプロジェクトにより、養殖業界全体への高品質な昆虫タンパクの供給が期待されており、食料供給の安定化につながるでしょう。
サステイナビリティと雇用創出
この新しい事業は、サーキュラーエコノミーを重視し、廃棄物を有効活用する形で持続可能な経済の形成を目指します。インドの農村部においては、技術指導を通じてカイコを用いた乾燥技術を導入し、農家の収入増加と新たな雇用創出に寄与します。
さらに、従来の魚粉製造に比べて水や土地の利用面積を大幅に削減することができ、海洋資源の保護にもつながります。環境に優しい栄養源の提供として、養殖業界の課題解決が進むことが期待されています。
未来への展望
2026年には新工場が稼働し、初年度から月間150トンの生産を見越しています。SB社で生産されるパウダーやオイルは、インド国内の淡水養殖市場だけでなく、バイオ科学の国際的なネットワークを通じてヨーロッパや南米の市場にも供給される予定です。
5年後の売上高としては7億円超を目標にしており、インド市場の成長とともにIPOも視野に入れて、グローバルな成長を加速します。これを通じて、日本の養殖業界だけでなく、インドの農村経済にも新たな風を吹き込む取り組みになります。